微妙に変化し続ける老舗の商品
先日、私担当の大学院の講義の中で、ある資料に書かれていた『老舗』という言葉を院生が「ろうほ?」と読んでいて、「“しにせ”って読むんだよ」というやりとりがありました。完全な当て字なので、読みにくい漢字ではあります。
私も20代前半ぐらいまで「手羽先(てばさき)」を「毛羽先(けばさき)」とずっと勘違いしていたので、何も偉そうなことは言えません。「ケバじゃなくてテバなの?」ということを知った時の衝撃といったら…。知らないうちに積み重ねた恥ずかしさに赤面です。
以前、大学の同僚の先生から老舗経営者にインタビューを行っている書籍を頂いていました。その中で、あんぱんの「木村屋總本店」、高級フルーツショップの「千疋屋」、カステラの「文明堂」などの老舗経営者が、経営のキーワードとして挙げていたのが「伝統と改革」でした。
創業140年を超える木村屋總本店の名物であるあんぱんは、発売当時のものとは原料が異なり、常に改善、改良を行っています。また、森永製菓のロングセラー商品であるチョコボールも、過去50年近く、毎年のように微妙に味を変更していると聞いたことがあります。
一見変わっていなさそうな看板商品も決して漫然と発売しているわけではなく、時代の流れに伴ってちょっとずつ変化させています。これは、老舗の商品に関わらず、生き物の進化の過程であったり、人の会社での働き方など、多くの場合にもあてはまるでしょう。
「環境に合わせて、変化できるもののみが生き残れる」というシンプルな理論です。劇的に変わると弊害が出てくるので、ちょっとずつマイナーチェンジで変わることができるというのがミソなのでしょう。