「安心マニュアルが欲しい」と「信じたくないものは信じない」
災害時の食事について聞かれることがよくあります。先日もある方とそんな話になりました。「どんなものを、どれだけ準備したらいいですか?」といった質問です。
具体的な食品の種類を尋ねられ、毎回、お話していく過程で感じるのは、「何を準備すれば、私のココロは安心するの?」という言葉には表れない心理です。「これを準備しておけば安全です!」と言って欲しい欲求を相談者の方から強く感じます。おそらく「“安心マニュアル”が欲しい」という願望なのでしょう。
実際に震災時、自分の置かれた状況によって欲しいものが劇的に変わることを身を持って体験しました。ライフラインの有無、復旧によって準備できるもの、作れる料理はその都度大きく変わります。その人その人によっても欲しいものは異なるでしょう。
ご自宅の電気・ガス・水道のライフラインをすべて止めて、食などを準備しようとすれば、自分や家族にとって何が重要かはすぐにわかるはずです。しかし、災害でライフラインが止まることはあると頭でわかっていても、本当に途絶えるとはココロではなかなか理解できないというが私たち人間です。
首都圏で今後30年以内にM7程度の地震が発生する確率は70%であるといわれています*1。しかし、科学的根拠に基づく予測を知ったところで、「信じたくないものは信じない」という層が一定以上存在すること*2は、防災担当者のみならず国民の多くが十分に理解する必要があるように感じます。
経験していないことは人は想像することが極めて難しいと、私自身の体験を振り返って感じます。3.11前に大した準備をしていなかった自分は、まぁ偉そうなことは何も言えませんが。
今朝のちょっと大きめの地震でまたふと感じたことでした。
*1:地震調査研究推進本部・地震調査委員会, 2004,相模トラフ沿いの地震活動の長期評価(平成16年8月23日)