アイスクリームの分子構造 〜分子調理によるアイスクリームの未来〜
乳脂肪分の多い濃厚なプレミアムアイスクリームのおいしさのひとつは、そのクリーミーな舌触りですが、そのアイスクリームを顕微鏡等を使って分子レベルで見ると、アイスクリームの中の氷の結晶が小さいことがわかります。
アイスクリームのクリーミーさは、アイス組織中の氷の結晶の大きさと密接な関係があります。氷結晶の大きさと舌触りの関係は、顕微鏡で観察すると氷結晶が、
- 35 μm未満 → 著しく滑らかなアイスクリーム
- 35〜55 μm → 滑らかなアイスクリーム
- 55 μm以上 → 粗いアイスクリーム
となります。
氷結晶の核形成や成長は、フリージングや貯蔵時の温度や時間によって変化します。低温で長時間ミックスを放置すると氷結晶が融合・粗大化のプロセスをとります。
氷結晶が55 μm以上を超えたアイスクリームは滑らかさを欠き、粗雑でざらつきがあり、アイシーな食感になると報告されています。
このように、おいしいアイスクリームを考える上で、アイスクリーム中の
- 気泡の数と大きさと分布
- 乳脂肪の量と存在形態
- 氷結晶の数と大きさと分布
などといったミクロの構造を理解することが大切であるといえます。アイスクリームのおいしさの秘密を分子や組織レベルでメカニズムを探ることが、「マクロからミクロ」の流れの分子調理、すなわち分子調理学の特徴といえます。
反対に、「ミクロからマクロ」の視点で考えると、分子・組織レベルでの解析から、氷結晶が小さければ小さいほどアイスクリームがなめらか、すなわちおいしくなるということがわかれば、いかに氷結晶化を抑えるか、凍らせる時間を短くできる技術を考えることになります。
凍らせる時間の短縮化に最適な手法は、現状では「液体窒素」がベストなので、液体窒素を使って瞬間的に凍らせた「液体窒素アイスクリーム」はクリーミーでおいしくなるはずです。
アイスクリームがおいしくなる原理に基づいて、最適な手法を用いて料理を応用的に開発するのが、「ミクロからマクロ」の流れの分子調理であり、すなわち分子料理法です。
一つ目の「マクロからミクロ」の「おいしい料理を分子レベルで調べる」はサイエンス、二つ目の「ミクロからマクロ」の「分子レベルで調べた原理を応用しておいしい料理を作る」はテクノロジーです。
この分子調理学と分子調理法によって、上のアイスクリームの例だけではなく、あらゆる料理をよりおいしくし、さらに全く新しい料理の開発が可能になることでしょう。
References