シェフは将来、心理学や脳科学が“必修”になる?
昼食がよくパン派かごはん派かに分かれるように、朝はトーストと目玉焼きとか、卵かけごはんなどの定番の食事になる人が多いでしょう。
一般的に家で食べる食事は、いつもの食事を求めがちなのに対し、たまに外食する場合などは、普段とは変わったものが食べたくなるものです。「日常と非日常」、「ハレとケ」、「祭りの日と祭りではない日」の世界です。
そもそも「単調な食事を続けていると食欲がなくなる」ことが知られています。
これを栄養学的観点からみると、単調な食事を続けると、栄養が偏ってアンバランスになるのを防ぐという理屈で理解できます。実際、体が必要とする栄養素が欠乏すると、その栄養素を含むものが無性に食べたくなり、実際食べるとおいしく感じます。
しかし、最近、心理学の分野では、人はおいしさに「より変わったもの」であったり、「微妙なずれ」を求めるという仮説が提唱されています。
つまり、普段とは違う食事を食べることによって、いつもの食事によって形成された食に対する期待からの「微妙なずれ」にワクワクやドキドキ感を感じたいという欲求が、人の心理にはあるのかもしれない、ということです。
人に対して「ギャップ萌え」という言葉がありますが、食も同じということでしょうか。
食に対するおいしさの“心理”は、人の“脳”で判断されているのは間違いありません。
私たちが料理を味わっている時の“脳の活動”が、「脳機能イメージング法」によって、人に無害で調べることができるようになりました。
「脳機能イメージング法」のひとつであるfMRI(核磁気共鳴撮影法)などを用いて、たとえばソムリエが、ワインを味わっている時の脳活動を一般の人と比較すると、脳の活動する場所が異なっていることがわかっています。
空腹時と満腹時の脳活動の違い、男女の甘いものに対する違いも研究されています。
どのような料理をどのようなシチュエーションで提供すればより人の脳が満足するのか、その人の脳の活動を測定することで、言葉で話すよりもより明快に分かることでしょう。
シェフが、お客がおいしさを感じている時の脳での神経細胞の興奮パターンを把握し、それを再現するような料理を登場させるようになるかもしれません。
また、おいしさの心理学を研究することによって、生活環境、環境要因などを考慮した、食材、盛りつけ方、テーブルセッティングなどが行われていくことでしょう。
心理学や脳科学の研究成果が私たちの食べる料理に活かされる時代がやって来るのは、そう遠い未来ではないかもしれません。