震災後の栄養から考える「ライフステージ栄養学」と「オーダーメイド栄養学」
震災後の栄養事情から
今日、Webサイト上で見つけた「震災後の“栄養”」に関するカロリー不足*1とカロリーオーバー*2という“相反する”2つの記事から。
東日本大震災:避難所の食事、栄養に問題 1カ月後も解消されず−−宮城・南三陸
東日本大震災の避難所で提供された食事は、地震発生から1カ月を経過しても1日平均の摂取エネルギーが1631キロカロリーと、成人男性に必要な量(2500〜3050キロカロリー)の半分程度にとどまっていたことが分かった。支援物資や炊き出しが始まっても十分な食事が提供されなかっただけでなく、栄養の偏りも目立った。
(以下略)毎日新聞 2012年3月6日 東京朝刊
栄養士の役割に注目 被災地でメタボをどう防ぐのか
昨年の東日本大震災の被災地で配られた食料に偏りはなかったか−。時期によってはメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)に該当する人が避けるべき食事が集中的に供給された感が否めない。
(中略)
それでも、5月頃から揚げ物類が含まれた弁当の配給が始まると事情は一変し、「糖尿病や高血圧症を悪化させる人が出たり、健常者でもメタボになる可能性が高まったりした」(今野さん)。健診を受けた被災者の血糖値が上昇したなどの報告が目立ち始めたのだ。(以下略)
MSN産経ニュース 2012.3.6 07:36
震災後に求められる栄養とは
震災時に求められる「栄養」の前提にあるものは、普段私たちが食べている、そしてこれまで食べてきた「栄養」の延長です。
あたりまえですが、赤ちゃんとご年配の方では、必要とする栄養が違います。人の一生のそれぞれのライフステージ、乳幼児期、学童・思春期、成人期、老年期(女性の場合は妊娠・出産期も)での必要栄養素、栄養所要量は必然的に異なります。
そのため、それぞれのステージにあった、きめ細かな栄養学が求められます。それが「ライフステージ栄養学」と呼ばれる学問です。
また、同じライフステージの人であっても、個人個人で必要とする栄養も違います。
ヒトはそれぞれ、大きな異常や障害を示さないまでも、遺伝子にほんの少しの「違い」を持っています。これは「遺伝子変異」と呼ばれており、薬の効き方や副作用の違いに影響しています。
「栄養」もまさに同じで、個人の「遺伝子変異」によって栄養素の必要量は異なります。たとえば、糖尿病になりやすい遺伝的特徴を持った個人であれば、その発症を少しでも遅らせる食の設計が必要です。
医療と同様に、個人個人にあった栄養を考える「オーダーメイド栄養学」が、平常時にも震災時にも大切な時代になっていくでしょう。
とりわけ、非常事態である震災時には、「その人に合わない食事」は、その人の命に関わることにもなりかねません。
乳幼児、高齢者、食物アレルギーのある方、慢性疾患(糖尿病、高血圧)などの持病を抱えた方々等をそれぞれ想定して、被災時に「災害弱者」となる方々をしっかりと守ることができるように、「ライフステージ栄養学」と「オーダーメイド栄養学」の発想から、災害時の食事や栄養を考えていくことが必要だと思います。