日本のマヨネーズのおいしさの秘密
先日、キューピッドをマスコットキャラクターにするマヨネーズやドレッシングなどを製造する会社の研究所の方とお話する機会がありました。
そこでお聞きしたマヨネーズの品質向上に関する技術というのは、驚愕ものです。
多くの食品は、空気中の酸素によって酸化し、風味を劣化させることはよく知られています。マヨネーズは、植物油や卵黄に酸化されやすい脂肪成分を多く含み、また卵黄由来の鉄イオンが酸化を促進する成分であるため、品質劣化が起こりやすい食品です。
海外ではEDTAなどの酸化防止剤を添加物として配合して酸化劣化を防ぐことが一般的のようです。しかし、添加物が嫌われる日本では、製造工程や容器において徹底的に酸素遮断を行うことで品質の安定な製品を作ってきました。
日本のマヨネーズには、酸素を通しにくい容器の開発だけではなく、原料に溶存している酸素、容器内にヘッドスペースの酸素などを徹底して取り除いてきたという「酸素」との戦いの歴史があります。
海外のスーパーマーケットで、マヨネーズがガラスのびんに入っているのを見た方もいるのではないかと思います。そもそも、マヨネーズのようにデリケートな食品は、空気をちょっとずつ通してしまうプラスチック容器での保存は適さず、酸素を全く通さないガラスに入れて保存するのが常識です。しかし、使いやすさの点ではなんといっても、プラスチックがいいので、そのプラスチックもできるだけ酸素を通さないものに技術改良されてきました。
私がカナダに留学中、同じラボにいた日本人は「カナダのマヨネーズは軟弱だ」といって、日本食材を扱っている韓国スーパーで、赤いキューピッドが描かれた日本のマヨネーズをわざわざ買っていました。最近、日本のマヨネーズが海外でもという人気というニュースもありました*1。
日本のマヨネーズ、確かにおいしいです。抜群におししいといっていいでしょう。さらに、研究所の方のお話によると、マヨネーズは製造直後よりも、しばらく置いたものほうが旨み成分が増えるのでもっとおいしくなっているようです。熟成マヨネーズですね。
ある食品のことを詳しく知ると、その裏にはさまざまな技術が隠されていることを感じます。そして、そのまた裏には、その食品を作るのに努力を重ねた沢山の人の品質向上にかける熱い思いがあるということをひしひしと感じるのです。