なぜ、日本の農業は大規模化しないのか?
私の実家では、細々と農業をしています。自分の家で食べる分の米と野菜を作っており、親元を離れている私の家にも旨い米と新鮮な野菜が定期的に送られてきます。そのため、自分で米を買ったことがありません。
いま、田植えが最盛期を迎えています。実家の年老いた親が、地域の方々(皆さん高齢者)と共同で作業に当たっています。しかし、農業従事者の高齢化は私の目から見ても、”ハンパ”ありません。
一時期、土木業界が不況のあおりを受けて、農業分野に進出する話をよく耳にしたのですが、その後、農業の企業化が飛躍的に進んだという話はあまり聞こえてきません。今の日本の瀕死ともいえる食料自給率を上げるのに、農業規模の拡大は不可欠なはずなのに、どうして、日本の農業は大規模化しないのでしょうか?
田原総一朗さんが、4月30日の日経BPネットのコラムで次のように書いています*1。
今の日本の農業は、65歳以上の従事者が約60%。10年前は55歳以上が60%だった。このままでいくと完全に、10年後は75歳以上が60%になる。つまり、後継者が全く育っていないということになる。
農業の生産量も半分に減っている。なぜ農業はこんなに駄目になったのか。つまり後継者が出てくるためには、農業が魅力ある産業でなければならない。魅力ある産業にするためには採算がとれなければならない。
そのための処方箋は決まっている。つまり規模を大きくすればよい。だが、規模を大きくするということは農水省は絶対に言わない。
規模を大きくするということは、つまり農業従事者の数が減るということだ。自民党にとって農村は票田である。だから農民の数が減ることに自民党は絶対反対である。実は自民党だけではなく、民主党も反対である。農協も会員の数が減るために大反対する。
だから、絶対に今まで農水省は言えなかった。農水省の官僚たちに、なぜ言えないのかと聞いたら、それには理由があった。
実は、農水省の出す農業関係予算を通すためには、自民党議員の賛成がなければ通らない。自民党議員の賛成を得るためには、自民党議員が嫌がることは絶対にできないのだ。
予算を通すためには自民党の賛成がなければならない。自民党が嫌がることを提案すればその予算は通らない。だから「妥協」に次ぐ「妥協」を重ねてきた。それゆえ、日本の農政はちっとも良くならなかったのだ。
農業の大規模化は、「自民党の、民主党の、農協の、農水省のタブーだった」ということでしょうか。
”農業が儲かる”ということが分かれば、おのずと後継者は増えていくはずです。農業自体に興味を持っている人は決して少なくありません。コスト削減、利益率アップという点で、大規模化は不可欠でしょう。
しかし、今の私には、親の年老いていく姿と、日本の農業の衰退がオーバーラップして見えます。もちろん、どちらも元気でいて欲しいというのが私の願いです。