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夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

書は芸術なのか? 食は芸術なのか?

食と芸術

 国立新美術館の「ダリ展」を観てきました。

 ダリの自伝には「六歳のとき、私はコックになりたかった」と書かれていることからもわかるように、ダリは「食」に強い関心を持っています。

 晩年には料理本『ガラの晩餐』まで出版しています。

Dalí: Les Diners De Gala (Va)

Dalí: Les Diners De Gala (Va)

 

  その『ガラの晩餐』、ショップで視界に入り、おもわず買ってしまいました…。

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 ダリの料理がおいしそうかは別として、この「料理本」を眺めると、"自分の胃袋をこねくり回される”ような感覚になります。

 私が六歳のころを思うと、芸術家になりたかったです。絵を描くこととか、粘土をこねるとか、ダンボールでロボットを作ることに命を懸けていましたから。

 それこそ、ダリやピカソのようなスペインのカタルーニャ出身の芸術家たちの作品群は、わかりやすくインパクトがあるので昔から好きでした。 

 「ダリ展」の後、もう一つ気になっていた渋谷Bunkamuraでの「ピエール・アレシンスキー展」も見てきました。

 こちらは、ダリ展と違って人が少なく、落ち着いてました。

 ピエール・アレシンスキーは、「日本の書」のような圧倒的な筆の勢いと、抽象と具象のはざまを描く、ベルギーの現代美術を代表する現役の画家さんです。

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 私が気になっていたのは、「書は芸術なのか?」という点です。作品を観ながら、ぐるぐる考えていました。

 「書と芸術」に関する議論や書物は昔からあります。

書とはどういう芸術か―筆蝕の美学 (中公新書)

書とはどういう芸術か―筆蝕の美学 (中公新書)

 

  美しく描かれている「書」は、もちろん人の心を揺さぶる芸術性を持っていますが、歴史的には文字情報という「機能」がまずあり、芸術性はあとから付随したものでしょう。

 「食」も似たところがあり、栄養やおいしさが食べものにはまずあり、『ガラの晩餐』のような料理の芸術性は、後天的です。

 食の芸術性を考える上で、「書の芸術」の考察は参考になるのではないかと思い、「ダリ展」と「ピエール・アレシンスキー展」を同時に観てきましたが、結局、頭がお腹いっぱいになっただけでした。

 食と書はまあ、類似の性質はあると思います。「食 shoku」と「書 sho」で、発音も似てますし。