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夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

玉ねぎではなく長ねぎを“あめ色化”してカレー用にする方法

 前回のエントリーで、「玉ねぎのあめ色化のスピードアップ」を図りました。

 アルカリ性側でメイラード反応が促進することから、玉ねぎにアルカリの塩である「重曹」を加えて炒めてみたところ、あめ色になる時間が、重曹添加なしと比べてだいたい半分となりました。

 しかし、水分が十分飛ばないうちに、褐変化が進行したため、甘味の濃縮不足という別の問題が生じました。原因は、アルカリによる玉ねぎの細胞壁の崩壊が急速に進み過ぎたためと考えられます(重曹の添加量によってももちろん結果は違ってくるとは思いますが…)。

 カレー用のあめ色玉ねぎの“持ち味”は、玉ねぎに潜んでいて加熱濃縮によって顕在化される「甘味」、そしてメイラード反応によって新たに生じるコクアップのための「風味」の大きく二つでしょう。両者のバランスの最適化を図ることが、おいしいカレーを作るうえでポイントかもしれません。

 玉ねぎに関しては、何も加えずに地道に炒めた方が、時間はかかりますが“良い結果”をもたらすのかもしれません。ただ、せっかくですので、今回の「玉ねぎ+重曹」でわかったことを、次の料理開発に生かしてみましょう!

 玉ねぎに重曹を加えると組織が早く壊れてしましますが、反対に繊維質の多い食材に対する重曹の添加は、おそらく効果的なはずです。

 たとえば、玉ねぎの「食物繊維」の含量は、食品成分表をみると約1.4%なのに対し、同じユリ科の「長ねぎ」は、約2.3%とやや“かため”です。

 玉ねぎと長ねぎ中の糖質は、それぞれ約7.6%と約5.9%と長ネギの方が少ないですが、どちらもそれなりに入っています。玉ねぎでなくても、「長ねぎをあめ色にしたもの」をカレーに入れると、どうなるのでしょう!? おいしいのでしょうか。

 しかも、長ねぎの繊維をやわらかくするのに、重曹は今度役に立つのではないかと推測されます。

 やってみましょう。

  • 対照区:長ねぎ1本、サラダ油少々

 長ねぎは、あらめの「白髪ねぎ」にして、サラダ油で炒めます。

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 15分間加熱するとこのように。

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 “枯れ草”のような見た目。

  • 実験区:長ねぎ1本、サラダ油少々、重曹小さじ1杯弱

 重曹を振りかけて、対照区と同様に炒めます。

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 約7分後。小さな“かたまり”になりました。 

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 左:対照区(重曹なし、15分加熱) と右:実験区(重曹あり、7分加熱)を見比べると、次のように。

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 ボリューム感が全然違います。

 試食して見ると、どちらも甘味と苦味がありますが、重曹ありの方が、より味にまとまりがあるというか、コクによる深みがあるような感じですね。表現が難しいのですが…。

 前回と今回の「重曹ありなしによる、“あめ色化”玉ねぎと長ねぎの試食結果」を、私の主観でざっくりとまとめると次のようになります。

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 加える重曹の量にもよりますが、玉ねぎは重曹なしの方が、甘味が濃縮される過程でメイラード反応が適度に進みました。一方、長ねぎは重曹ありの方が、組織構造を適度に“ほぐして”くれるので、いい感じに成分濃縮と褐変化が同時に進行しました。

 玉ねぎ、長ねぎのあめ色化における重曹使用の有無(とその量)は、その食材の種類によって使い分けた方がいいということでしょう。

 あめ色化長ねぎは、鶏ひき肉としめじのカレーうどんにして食べました。

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  長ねぎの風味がほのかに感じられるカレーになっていました。あめ色化長ねぎは和風っぽいカレーに合うのではないでしょうか

 カレーは今日も、おいしいです!

 さぁ、次は何の食材を“あめ色化”しましょうか(笑)。