夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

カレー「専用米」の登場―料理のゴールを考えた『料理育種』

 私たちが主食としている「一般米」と日本酒用の「酒米」の品種が違うことは多くの人が知っているでしょう。しかし、「カレー専用米」、「寿司専用米」、「リゾット専用米」が品種改良によって登場していることはご存知でしょうか。

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 カレー専用の米「華麗舞」は、印度型品種「密陽23号」と日本型品種「アキヒカリ」の交配により作られています。カレーのルウになじみやすくなっています。

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https://www.naro.affrc.go.jp/publicity_report/publication/files/newrice09.pdfより)

 寿司米に最適の品種笑みの絆」は、粘りが強すぎず、酢によくなじみ、なめらかで、ほぐれやすく、あっさりした食感を持っているそうです。

 イタリア原産の大粒品種「CARNAROLI」は、リゾットに最適とされていますが、稲は倒れやすく低収量などの問題がありました。リゾットに適する国産の大粒米が求められていため、国内初のリゾット用品種として、「北陸204号」と「CARNAROLI」を品種改良した「和みリゾット」が近年育成されました。

 私たちが普段食べている食用植物や家畜は、人が長い間、品種改良(育種)を行い、人が育てやすいおいしい食材にしてきました。

 最近、私たちが食べる“料理”をゴールにした育種が本格的に行われきた印象を感じます。これは、まさに「料理育種」が登場したといっていいのではないでしょうか。

 これから、米や野菜などの植物性食材だけでなく、肉や卵などの動物性食材でも料理育種が行われていくかもしれません。

 しかし、課題はいろいろ考えられます。たとえば、どのように作るのか(遺伝組換えで作るのか)とか、目的とする料理にあった品質(性質)をきちんと定義できるかなどです。

 さらに、私たちが、料理に専門化した食材を食べて、そのおいしさを感じ取れるかが一番大きな問題かもしれませんね。