夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

現代フランス料理科学事典

 ご恵贈いただきました。

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現代フランス料理科学事典 (栄養士テキストシリーズ)

現代フランス料理科学事典 (栄養士テキストシリーズ)

  • 作者: ティエリー・マルクス,ラファエル・オーモン,的場輝佳,八木尚子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/03/21
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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  書籍タイトルが、見事に内容を表しています。「現代」の「フランス料理」の「科学」の「事典」です。

 見る立ち位置によって、おそらく感じ方が異なる書籍だと思います。

 料理人の方が見れば、現場に新しく登場した、球状化(カプセル化)ゲル化剤フードペアリングなどの技術の理解を助けるのに大きく役立つでしょう。

 理系の実験に携わったことがある人であれば、化学の講義や実験で習った、浸透現象水素イオン指数還流などの科学的手法が料理に応用されていることに新鮮さを感じることでしょう。

 一般の方でも、現代のフランス料理を表すキーワードである、真空調理シネレシスミクソロジーなどの説明から、フランス料理の今のトレンドが見えてくるでしょう。

 個人的にぐっと来た単語は、「分子はクール! Molecule...Molecool!」です。モルキュール…モルクール、まぁ、ダジャレなんですが(以下説明、一部抜粋)。

 私たちをとりまくすべては分子、原子、電子などからなる。生命そのものが化学的、生化学的反応の連続なのだ。まずはそこを定義してから、料理に移ろう。

(中略)

 ちっぽけな分子ではあるが勉強してみよう。食品を構成する分子がどのように反応し、作用しあうのかがわかれば、それを「最大限に」生かし、自在に料理することができる。

 「分子」という接頭語には、分子レベルで物事を理解する、すなわちその現象のメカニズムを調べるという意味合いがあります。

 原著の著者は、料理人のティエリー・マルクスと物理化学者のラファエル・オーモンの二人です。本の「はじめに」の最初には、次のような文が書かれていました。

 Escoffier(エスコフィエ)の時代から100年が経ち、「分子料理」なる言葉が辞書に登録された。

 「分子料理」は単なる流行ではないし、料理の革新は決して伝統と断絶もしていない。現在の技術と知識を活かした、新しい時代にふさわしい料理と素直にとらえたい。

  「エル・ブリ」のフェラン・アドリアなどがいるスペインの料理と比べて、フランス料理はどちらかといえば伝統的、保守的な立場であったでしょう。そのフランス料理でも、新たな知識や道具が、改革と創造を助けるものという認識が一般化しているということが、この本の出版からも垣間見て取れます。

 「分子料理・分子調理」の分野の背中をそっと押してもらった気分となった本です。

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