夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

料理と芸術のおいしい出会い

 私たちは、なぜおいしい料理に魅了されるのでしょうか?

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 たとえば、レストランでの食事はとても魅力的です。整然と並べられ食器、調和のとれた場の雰囲気。テーブルは明るく照らし出され、洗練されたサービスによって鮮やかに盛りつけられた料理が運ばれてきます。実際に料理を口にすることによって、味や香り、舌触りや口どけなどの食感などに得も言われぬ幸福感を感じます。

 科学的な視点で、料理のおいしさに影響を与える風味や食感に関係する成分が何なのか、脳のどの場所が活性化しているか調べればわかります。しかし、食品科学や脳科学だけで、はたしておいしさのすべてを理解することが可能でしょうか。

 同じサラダの材料であっても、きれいに盛りつければよりおいしく感じますし、反対に料理が載っている皿などが汚れていればおいしさは減退します。魅力的な料理は、私たちの感覚(センス)に訴えてきます。

 おいしさを分析していけば、「理性」や「知性」だけでなく、「感性」でおいしいと感じていることに気付くでしょう。

 料理においしさを感じている特の感覚は、絵画や音楽などの芸術作品を鑑賞している時の感覚と似ている部分があります。17世紀のイギリスの神学者ロバート・バートンは、『メランコリー(憂鬱)の解剖学』の中で「料理は芸術であり、かつ高尚な科学である。」と語っています。

 「料理が芸術である」なら、芸術とは何か、芸術で感動するのはなぜか、美しいのが心地いいのはなぜかなど、「芸術哲学」、「美学」、「感性学」の視点を持たなければ、料理の芸術面を真に理解することはできないでしょう。また、総合芸術としての料理は、絵画や音楽などの芸術と違いも明確にあり、これらの古典的な芸術作品で語られてきた芸術の美学の視点を加えれば、料理のおいしさの感性面を知ることができるのではないでしょうか。

 「料理と芸術のおいしい出会い」を夜な夜な考えていこうと思っています。

料理と科学のおいしい出会い: 分子調理が食の常識を変える (DOJIN選書)

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