夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

食の未来を考える意味

 年のはじめは、新しい一年の目標やその先の「未来」を考えるのにいいタイミングです。将来や未来予測に関するTV番組やWebの記事もよく目にします。

 人はこれまでさまざまな未来を想像してきました。突拍子もない空想レベルのものから、データに基づいた社会・経済や科学・技術のリアルな将来を予想したものまで。人は、未来を考えるをことが好きな生きものなのかもしれません。

 所属大学の講義に「食と未来」という学科教員によるオムニバスの講義があります。昨年末の最後の講義が私担当でしたが、私自身にとっても、より遠くの食の未来を見通すいい機会でした。

 数ある未来予想の中で、「未来の食」を考える意味は何でしょうか?

 「食」というものはそもそも、人間にとって不思議な意味を持つものです。

 食べものは、食べる前は自分にとってまったくの“他人”として存在しています。しかし、それを手にとって食べると“自分”の一部となります。食の様相には、同化、一体化というはたらきが込められています。

 すなわち「食」は、自分の「外界」と「内界」の二つの世界を合わせ持っている唯一無二の存在であるといえます。

 そのため、食の未来を考えるということは、将来の食材を生み出す環境がどのようになるかといった人間の「外側の世界」を予測することに加え、どのような料理が求められるかといった人間が持つ「内側の世界」を眺めることにも繋がります。

 私たちが食べている“ごはん”は、人々の周囲の「世界」と人々の内なる「欲望」をともに表す良い指標であると思います。

 今年は、この食の未来が今後どのようになっていくのか、科学ベースでいろいろ想いを巡らす年にしたいなと考えています。

 本年も「夜食日記」をどうぞよろしくお願いします。

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