夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

料理の見方を変える「料理の式」

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 フランスの物理化学者がエルヴィ・ティスが考案した「料理の式」。以下のふたつの要素を組み合わせることで、あらゆる料理が表現できるといっています。

要素その1(食材の状態)

  • G(ガス):気体
  • W(ウォーター):液体
  • O(オイル):油脂
  • S(ソリッド):固体

要素その2(分子活動の状態)
  • /:分散
  • +:併存
  • ⊃:包合
  • σ:重層

 例えば、泡立てる前の生クリームは、「水の中に油脂が散らばっている」状態であるため、式に表すと「O/W」のようになります。また、泡立てた後の生クリームホイップは、油脂に空気を含ませるため、油脂(O)に空気(G)を加え(+)、その空気を含んだ油脂が水の中に散らばっている(/)状態となり、「(O+G)/W」と表されます。

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 この料理の式の視点を持つことで、新たな料理の開発も考えられます。

 たとえば、生クリームの式の油脂を表すOのところを、油脂分を含むチーズやレバーに置き換えたら、理論的にはホイップチーズやホイップレバーが作れるはずです。さらに、油脂を含まない食材、たとえばトマトをジュースにオリーブオイルを加えれば、ホイップトマトも夢ではありません。

 このように料理を“式”で表し、式の中の食材を別のもので置き換えたり、式を変形したりすれば、その応用は限りなく広がっていくでしょう。

 「この食材ではこの料理だ」という私たちの先入観が、新しい料理の発明を邪魔しているのかもしれません。その点、「料理の式」を使えば、食材の固定観念に縛られることなく、どんな素材に対しても、物理化学的な特徴だけを考えて、いろいろな食材を式に当てはめるだけで、思いもよらなかった料理が生まれる可能性があります。