夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

塩レモンブームに乗って、「塩ブドウ」を作ってみたら…

 今年、万能調味料として大ブームを巻き起こしている、塩レモン。塩レモン関係のレシピ本を本屋でたくさん見かけます。

 さらに、そのブームに乗って現在、塩トマトや塩たまねぎなど“塩◯◯”シリーズが続々と登場しているようです。

 秋は果物の一番おいしい季節ですが、先月末、知人からブドウを一箱送って頂きました。

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 ほとんど生でおいしく頂いたのですが、ふと「塩レモンがあるなら、塩ブドウがあってもいいじゃない」という考えが頭をよぎり、“塩◯◯”シリーズ初!?であろう「塩ブドウ」を自宅で作ってみることにしました。

 材料である実にみずみずしいブドウ一房。

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 まず、すべての粒を四分の一にカット。

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  瓶に入れて、塩を適当にばさっと投入。

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 そのまま冷蔵庫で静かに保存。フレッシュブドウの塩蔵。そして、一ヶ月経った状態がこちら。↓

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 浸透圧でブドウから水分が溶出し、いい感じで“漬かって”います。溶出した液体は、皮からポリフェノールが染み出し、きれいな赤紫色をしています。

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 取り出して見ると、果肉も赤く染まっていました。カットしてみると、中までポリフェノールが浸透しています。きれいです。香りを嗅いでみると、ブドウの芳醇な香りが立ち上がっています。

 そして、肝心の味ですが、一つつまんで、ちょっとかじって見ると…。

 お、おいしくない…。率直に言って、マズいです。ブドウの甘さや香りを感じる間もなく、強烈な塩味のみが口腔内を支配し、塩気が脳天を突き刺します。ブドウの良さを打ち消す、ちょっと予想だにしなかった味です。

 塩を入れ過ぎた感もありますが、梅干しの梅は塩があれだけマッチするのに、なぜブドウはこんな残念な感じになってしまったのか。

 外国の方が、初めて梅干しを食べると驚くのは、梅干しの見た目からあの塩っぱさを想像できないからといいます。

 今回の塩ブドウもある意味同じかもしれません。普段食べているブドウとして想像している味と実際に食べた時に塩ブドウの味のギャップに頭が混乱する感じです。斬新な味に脳が追いついていないのでしょう。

 また、塩ブドウは、塩と酸味のアンバランスさも感じます。

 レモンや梅のすっぱい酸味の元は、有機酸であるクエン酸です。それに対して、ブドウの酸は、同じ有機酸でも酒石酸が40〜60%を占めています。ひょっとしたらこの酸の種類と塩には相性があるのかもしれません。

 オレンジなどの柑橘系の酸の成分はほとんどがクエン酸なので、塩オレンジはきっと外さないのではないかと思います。

 塩ブドウ、炭酸に入れて飲んでみましたが、炭酸の爽快感を見事に消し去っていました。

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 瓶にたくさん作ってしまった塩ブドウ、どうにかしておいしく食べる方法がないか模索中です。いいアイデアがあれば、皆様教えて下さい。

 結論としては、「塩レモンは作っても、塩ブドウは止めた方がいいですよ」ということです。