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夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

発見はどこから来るかわからない。クラゲとセレンディピティ

料理・調理 食品開発 食旅

 多くの人の心の琴線に触れる物語の定番といえば、主人公が「どん底から立ち上がる」という話でしょう。リアルの世界で、そんなストーリーを見させてもらいました。山形県にある鶴岡市立加茂水族館のクラゲにまつわる物語です。

 昨日、その加茂水族館に行ってきました。

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 加茂水族館は、今年6月1日に「クラゲドリーム館」としてリニューアルオープンしたばかりです*1

 世界一の種類のクラゲの展示数(50種類以上)を誇る各水槽の前には、多くの人で賑わっていました。クラゲの給餌解説時は、この通り。

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 圧巻だったのは、ミズクラゲ大水槽(クラゲドリームシアター)。緩やかに対流するミズクラゲ。上からライトが差し込み、神秘的な光を放っていました。

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  展示の仕方や案内掲示板にも、いろいろな工夫をされていました。

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 地方にある古く、貧乏で、老朽化した「弱小水族館」が、どうやって「世界一のクラゲ水族館」になったのか?

 詳しい解説は、ダイヤモンド・オンラインやJBpressの記事*2*3、そして加茂水族館村上龍男館長のブログ*4をご覧頂くとして、偶然から幸運を掴まえる能力「セレンディピティ」という言葉が頭をよぎりました。

 よその水族館がやったことの後追いばかりで、マネでしかなかったという以前の加茂水族館。金もなく、規模も小さく、内容も個性もなく、ついには「落ちこぼれ水族館」という不名誉な称号までつけられてしまったそうです。そんな時、偶然現れたのがクラゲでした。

 沈没寸前の加茂水族館は1997年、「最後の悪あがき」(村上館長)に出ることにした。当時、流行っていたサンゴの企画展「生きたサンゴと珊瑚礁の魚展」である。2つの小さな水槽で、半ばやけっぱち気味の大勝負に打って出たのである。結果は案の定、散々なものだった。この年の入館者数はわずか9万2000人に終わり、過去最低を記録してしまった。

  これで万事休すとなるはずだった。しかし、世の中はわからないものだ。 企画展の準備をしていた飼育員が、サンゴの水槽から小さな生き物が泳ぎ出すのを偶然、見つけたのである(発見したのは奥泉和也副館長)。

 「これは何だ」となり、サカサクラゲの赤ちゃんだということが判明した。サンゴにくっついていたものが繁殖したのである。餌をやったところ、500円玉くらいの大きさに成長した。それらを展示してみたところ、お客さんは大喜び。水槽を見つめる笑顔に初めて手ごたえを実感し、「これだ!」となった。どん底からの大逆転劇の始まりである。

(ダイヤモンド・オンラインより)

  クラゲに着目したのが単なる偶然ではないことが、そのサンゴからクラゲを発見した奥泉和也副館長が今年9月9日に出演されたNHKの「視点・論点」の番組記事からわかります*5

育て方を聞き2ヶ月ほどで500円玉くらいまで成長させ展示することができました。驚いたことにお客様は他の水槽の3倍から5倍も長くクラゲ水槽の前に止まっていたのです。
クラゲの魅力に気がついた我々は手探りで他のクラゲの飼育も始めました。ところが、ミズクラゲなど泳ぐクラゲを捕まえてきても体に空気が入ったり、排水溝に吸い込まれたりして上手に飼うことができませんでした。

視点・論点 | NHKより)

 お客がクラゲに魅力を感じていることを“観察”から察知し、さらに飼育が難しいクラゲの水槽の改良という“試行錯誤”などがあって、いまのクラゲ水族館の成功につながっていることがわかります。

 逆境の中でも何かをつかみとろうとするセレンディピティの心を持ち、観察試行錯誤を怠らないという骨太の話が、加茂水族館の「どん底からのクラゲ・サクセス・ストーリー」には秘められていたのでした。

C彡   Cミ   C彡   Cミ   C彡

 このブログは「食」ブログなので、加茂水族館で私が食べたクラゲ料理を紹介します。

 お昼に頂いた、名物の「クラゲラーメン」。

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 細く刻んだエチゼンクラゲ?とまるごとの姿をしたタコクラゲ?、そしてなぜかキクラゲが加茂水族館のオリジナルどんぶりに入っていました。

 「クラゲ定食」も看板メニューとして有名ですが、私がレストランを訪れた1時頃にはすでに完売していました。残念…。

 クラゲのデザートメニューも豊富。

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 「クラゲヨーグルトシェーク」と「クラゲアイス(ソーダ味)」を頂きました。

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 コリコリした食感のクラゲが入っており、味のアクセントになっています。

 そして、個人的に一番気に入ったのはこちら。

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 山形名物の玉こんにゃくをクラゲの形にした「クラゲコンニャク」。実際のクラゲは使われていませんが、コンニャクはイカと醤油と一緒に煮てあり、しっかりとしたうま味がありました。何といっても、見た目がキュート!おみやげ用としても売っており、ひとつ買いました。

 クラゲ料理にもいろいろ開発ストーリーが詰まっています*6*7

*1:鶴岡市立加茂水族館 | 世界一のクラゲ水族館 鶴岡市立加茂水族館

*2:落ちこぼれ水族館が「クラゲで世界一」に変わるまで 加茂水族館の名物館長が振り返る「波乱万丈半生記」|相川俊英の地方自治“腰砕け”通信記|ダイヤモンド・オンライン

*3:全力で「バカ」をやれば道が開ける、世界一のクラゲ水族館に学ぶ大逆転の秘策:JBpress(日本ビジネスプレス)

*4:館長人情ばなし | 鶴岡市立加茂水族館

*5:視点・論点 「クラゲ ふわ~り浮遊生活」 | 視点・論点 | 解説委員室:NHK

*6:クラゲ食べる発想に驚き!! 海外メディアも注目 “不思議なイベント”を取材|2009年10月21日付け紙面より|荘内日報ニュース−山形・庄内|荘内日報社

*7:真夏は50度にもなった | 鶴岡市立加茂水族館