夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

Q. 栄養を摂るために食べるのに、吸収を抑えるトクホってなんか矛盾してません?

 私の講義での学生からの質問。

A. 食べることに多くの役割を求めるのが、人間です。

 脂質や糖質の吸収を抑える特定保健用食品(トクホ)や健康食品がたくさん上市されています。「食べるのをガマンしない」といった謳い文句とともに。

 そもそも人は何のために食べるのでしょう?

 アメーバのような単純な生きものであれば、主にエネルギー源や体をつくる“栄養素”としてものを食べているのでしょう。アメーバに食欲があるかどうかは、アメーバに聞いてみないと分かりませんが、人間の摂食行動が、単純細胞よりも複雑なのは間違いありません。

 食べるという行為には、栄養を摂取するという目的だけではなく、“楽しむ”という意味合いが含まれています。

 食べものをただの栄養源と捉えると「吸収阻害するくらいだったら食べる量を減らして、減らした分を食料飢餓に苦しむ人達に回せばいいのに」と思うかもしれません。しかし、人(食べものが溢れている国の人々)は食べものによって得られる“脳への幸福な刺激”を得るために、食事しているという面があります。人の幸福欲求に限りがなければ、「吸収阻害してでも食べる」という行為はこれからも行われていくでしょう。

 人が食べるという行為は、何とも複雑ですね。

 

f:id:yashoku:20140721124658j:plain