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夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

アイスクリームの分子構造 〜アイスクリームの“柱”とは?〜

 前回からの続き。

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 アイスクリームは、見方を変えるとミックスの中に空気を抱き込んだ「」であるといえます。さらに、ミックスは脂溶性分子と水溶性分子が混ざり合った「エマルション」でもあります。つまり、アイスクリームの構造には、メレンゲ菓子やマヨネーズに見られる要素が組み込まれていると言えます。

 アイスクリームミックス中の乳脂肪は、原料の牛乳がホモジナイズ(均質化)されていることによって、小さな脂肪球として存在しています。

 ミックスをかき混ぜながら凍らせていくと、その脂肪球が部分的に会合し、不安定になります。その際、“ブドウの房”のようになった乳脂肪は気泡の表面へと移動し、層を作って安定化しようとします。この房状脂肪がアイスクリーム組織の骨格となります。

 脂肪球の凝集は、アイスクリーム製造の際に気泡を破壊し、オーバーランを低下させますが、脂肪は「アイスクリームの柱」になり、形の維持に多分に影響を与えています。低脂肪乳でオーバーランを高くすると気泡が安定化しないのはこのためです。

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 また、牛乳中に含まれるカゼインやホエーなどのタンパク質分子は、「水-油系エマルション」を安定に保つ「乳化剤」として働いています。しかし、卵黄や大豆の中にあるレシチンや、グリセリン脂肪酸エステルやソルビタン脂肪酸エステルなどの乳化剤を外から入れると、脂肪球表面に付着していたタンパク質が添加乳化剤によって置き換わり、より安定に気泡の形を保つことができるようになります。

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 アイスクリームをカラーの模式図化すると次のようになります。

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 アイスクリームは、液体である凍結して濃縮されたタンパク質や多糖類が溶解した「連続相」の中に、部分的に会合した脂肪球のネットワークにより安定化された気泡と、氷の結晶が分散して存在している「モデル」といえます。

 気泡、乳脂肪ととも大事な、アイスクリーム中の氷結晶のことについては、また次にでも。

 

References

  1. Colloidal aspects of ice cream structure | Food Science
  2. Agro FOOD Industry Hi Tech articles
  3. Goff HD et al. (1997) Colloidal aspects of ice cream—A review. International Dairy Journal 7: 363–373. 
  4. Hartel RW et al. (1996) Ice crystallization during the manufacture of ice cream. Trends in Food Science & Technology 7: 315–321.
  5. Huppertz T et al. (2011) Effect of high pressure treatment of mix on ice cream manufacture. International Dairy Journal 21: 718-726.