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夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

コオロギでだしを取る@世界のベストレストラン

 6月に入りました。6月といえば、あさって6月4日は、虫の日ですね。

 昨年、国連食糧農業機関(FAO)が昆虫食を推奨する報告書を発表し、多方面で話題となりました*1

 今年に入っても、ハーバード大学の卒業生、女性3名が「コオロギチップス」を考案し*2、その開発費をクラウドファンディングで獲得した話や、人々の抵抗感を低くするための「昆虫食のプロダクト・デザイン」が研究されているニュース*3など、昆虫食に関するニュースをいくつも目にしています。

f:id:yashoku:20140602141029j:plainUSA TODAYより)

 昆虫食に今、人々の関心がかなり集まっています。

 その中で、個人的にとても刺激的に感じた話題に、昆虫食と対局にありそうな?美食・ガストロノミーの世界にも「虫の足音」が確実に近づいているという話があります。

 美食レストランランキングともいえる「世界のベストレストラン50」で、今年2014年のトップに立ったのは、レネ・レピゼ氏(René Redzepi)の「ノーマ Noma」(コペンハーゲン、デンマーク)でした*4。2年ぶり4度目の栄冠です。

 ノーマは、地元の素材や伝統的な調理法を重視しつつも、独創的な料理が話題のレストランです。私は以前ノーマのレシピ本を買って、味に想いを馳せていました。

f:id:yashoku:20140603102532j:plain

ノーマ―北欧料理の時間と場所

ノーマ―北欧料理の時間と場所

 

 このノーマのレネ・レピゼ氏、2008年に「Nordic Food Lab」という非営利の美食研究所を創設しています。その団体のウェブサイト内にブログがあり、創設時からチェックしていたのですが、今年に入って目を引く記事がいくつかありました。その一つが、「コオロギスープ Cricket Broth」というタイトルの記事でした*5

 そこでは、コオロギ、ローストしたコオロギ、ミールワームからのだしや昆布との合わせだしをそれぞれテイスティングしていました。たとえば、コオロギから取ったスープ「White Cricket stock」は、魚臭やエビの殻を連想させる匂いがするのだそうです。

f:id:yashoku:20140531232218j:plainNordic Food Labより)

 そしていろいろな調理法を試して、“最もクリアー”なスープのレシピというのがこちら。

材料
  • 1000g 

  • 200g ローストしたコオロギ(160℃で18分間加熱)

  • 4g 海塩

方法
  • 材料を合わせて、真空バッグ中で85℃で1時間加熱する。 

 このNordic food labは、コペンハーゲン大学とともに、ベルックス財団から昆虫ガストロノミーに対する資金サポートを受けています*6。この昆虫プロジェクトは、決してネタなどではなく、大学の研究者も参画する完全なガチ企画なのです。

 コオロギチップスはいけそうですが、コオロギスープは受け入れられるのにちょっと時間がかかりそうな気がします(日本では)。しかし、今後、欧米の若い起業家や世界トップのシェフらが、従来の昆虫食のイメージを一新させる可能性はあります。

 日本では、食用昆虫科学研究会(食昆研)さんが素晴らしい活動をなさっています。メンバーの内山昭一さんの書籍も何冊か持っています。

昆虫食入門 (平凡社新書)

昆虫食入門 (平凡社新書)

 

 じつは、私の研究室でも今年から昆虫食に関する研究プロジェクトをスタートさせています。「”食”とはなんぞや」ということを改めて噛み締める毎日です。

*1:ニュース - 文化 - 国連が昆虫食を推奨、人気の8種とは? - ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト(ナショジオ)

*2:Six Foods

*3:「昆虫料理」に安心感を与えるデザインとは « WIRED.jp

*4:The World's 50 Best Restaurants

*5:Cricket Broth — Nordic Food Lab

*6:Big News — Nordic Food Lab