夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

英国人が書いたこの本は「和食のバイブル」になるのではないか?

 『英国一家、日本を食べる』という本の感想を以前書きましたが*1、その第二弾の『英国一家、ますます日本を食べる』、先ほど一気に読み終えました。

英国一家、ますます日本を食べる (亜紀書房翻訳ノンフィクションシリーズ)

英国一家、ますます日本を食べる (亜紀書房翻訳ノンフィクションシリーズ)

 

 こ、こりゃまた、すごい本ですね。前作と合わせると、ルース・ベネディクト氏の『菊と刀』に匹敵する作品ではないでしょうか。食関係に携わっている人なら必読でしょう。日本食文化の深層心理に触れることができる本です。

 著者のマイケル・ブース氏は、今回も和食の心臓部にガシガシ切り込んでいます。

 和食のだしの基本は「昆布」と「かつお節」ですが、前著で北海道の昆布の生産地として有名な南茅部町(現函館市)の昆布漁を見ていましたが、続編では、静岡県焼津市でかつお節の加工業者を訪ねています。さらに、うま味調味料のグルタミン酸ナトリウムにも興味が広がり、味の素株式会社に電撃取材しています。

 「」に関しても、築地市場でのマグロの競りや東京かっぱ橋での包丁専門店を見るにとどまらず、静岡県伊豆半島のわさび田を訪れたり、料理教室で自分で鮨を握っています。そして、その鮨につける「醤油」の産地野田市にあるキッコーマン社もしっかり取材するほどの抜かりなさ具合です。

 私たち日本人は、外国人の日本食文化の理解度は「英国一家」の子どもたちぐらいと侮っているのではないでしょうか。著者ほど日本の食文化を客観的に、日本人が見えていない部分までも見えている人はいないと感じます。

 最後に「エピローグ 読者のみなさんへ」の中で、日本人読者に向けて書かれた著者の日本料理への想いは、これからの和食についての数多くの示唆に富んでいます。この部分を読むためだけに、この本を買ってもいいのではないかと思えるほどです。

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 第一弾と第二弾の表紙で、ちょっとした「間違い探し」ができます。素敵な装丁です。