夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

美しいものがおいしいのではなく、おいしいものが美しい。

 サイエンスにおいて、しばしば美しい形に出会うことがあります。顕微鏡で覗いたミクロの造形に心奪われ、夢中になって観察することがあります。しかし、それは決して意図したものではなく、あくまで結果としての美です。

 美が、研究を推進する動機となることはありますし、励みになることはあります。しかし、科学の世界で、美しいものを得ることを目的にするのは邪道でしょう。サイエンスは、あくまで客観的な真理を追求するもので、真偽の判断に美意識や倫理観は絡ませてはいけないものです。

 私たちが口にする食についても、美を追求するのは間違った方向であると感じます。最終的な段階に到達して視覚的な美しさを持つことがあっても、それを第一の目的とすると食は不自然な形となるでしょう。

 いろいろな食材を使った料理は栄養バランスが良く、風味・食感の幅が広くなり、食べると人はおいしいと感じますが、そのような料理は見た目も美しいことが多いということでしょう。

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