夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

「ヒトの肉を培養して食べる」ということ

 見つけてから1ヶ月以上、ずっとモヤモヤしていたニュース。 WIRED.jpから(抜粋)。

恐竜もセレブも、人造肉にして食べてしまうレシピ:ギャラリー

透明な肉や、セレブの幹細胞を培養した肉など、培養された人造肉の可能性を追求する「レシピ本」を紹介。

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「Dinosaur Wing」は、3Dプリントされた骨の周囲に、鶏肉とサンショウウオの肉の組織を培養して作られている。恐竜の前足の解剖学的に正確な大型モデルで、噛むと鶏肉のような味がする。

 

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「Celebrity Cube」は、現代最高のセレブたちの幹細胞から培養されている。

 

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「Knitted Meat」は、タンパク質の細い糸から作られている。将来的には、味付けされた肉繊維の玉がスーパーマーケットで販売され、新しい台所用品を用いて肉で服地を編めるようになるという。

 以前、「“試験管培養肉”ハンバーガー」の登場は、“食料生産新時代”の幕開けか?という記事を書きましたが、ウシの細胞を培養して食べる可能性は考えても、ヒトの細胞を培養して食べるという発想はアタマにありませんでした。というか、発想してはいけないことだと思っていたのかもしれません。

 物質論で言えば、ヒトの幹細胞を増やしてそれを“食肉“として食べても、私たちが現在普通に食べている牛肉とほとんど同じように消化、吸収されるでしょう。しかし、そこには心がざわつく、倫理的な問題が完璧に横たわっています。

 ”ネオカニバリズム”ともいえるこの「ヒト試験管肉」の問題は、「食とは何か」を考えさせてくれる重要な課題であるといえます。

 以前読んだ「未来の食卓 2035年グルメの旅」という本の中でも、試験管肉研究の歴史的な経緯がわかりやすくまとめられていました。

未来の食卓 2035年 グルメの旅

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