読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

トウガラシの“ニセ熱さ”、ハッカの“ニセ冷たさ”

 料理の温度に関係なく、食材の種類によってはそれを食べて熱く感じたり、冷たく感じたりするものがあります。東洋医学では、古くから体を温める“陽”の食材、体を冷やす“陰”の食材が知られています。

 熱くさせるものといえばトウガラシで、冷たくさせるものにはハッカやミントなどが有名ですが、その作用メカニズムが次第にわかってきました。

 トウガラシの辛味成分の「カプサイシン」は、舌や口腔にあるTRPV1という受容体に結合し、辛味の刺激を伝えます。このTRPV1は、カプサイシンだけでなく、熱の刺激を受容する受容体でもあります。

 つまり、熱とカプサイシンという異なる刺激によって同じように体が反応します。トウガラシの刺激は熱くなくても熱く感じる応答と同じ“擬似熱さ”、“ニセ熱さ”であるといえます。

 一方、トウガラシとは反対に、ハッカやミントが含まれるひんやりとする成分は「メントール」は、体の表面にある冷感受容体のTRPM8に結合し、温度を下げた時と同じような神経伝達が脳へと伝わり、体が温度を下げたような応答が起こります。これもカプサイシン同様、メントール刺激は、“擬似冷たさ”、“ニセ冷たさ”だということです。

 つまり、脳が騙されているのです。

 温めるカプサイシンと冷やすメントールを同時に食べるといったいどうなるでしょうか?

 実際に、唐辛子とミントの葉を買ってきて、同時に食べてみました。お互いの良さを打ち消し合う、なんとも“混乱した”味がしました。その後にものを食べると、感覚が10倍ぐらい敏感になった感じがします。どうぞ、お試しあれ。

f:id:yashoku:20140216191146j:plain