夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

「昼と夜は別の顔」を持つ店や人

 家の近くに“親父さん”が経営しているパブがあり、たまにギネスビールを飲みに行っていたのですが、昼はそのお嬢さんがカフェをしていることを聞きつけ、休日にふらっとブランチを食べに出かけることにしました。

 お昼過ぎに訪れると、アイリッシュ・ビールのような深みのある茶色の店内に陽の光が差し込んでおり、夜に見かけない手づくりクッキーが並べてありました。客層も若い女性の一人客がいて、夜とは違う“ヘルシーな”雰囲気。

 有機野菜いっぱいのランチプレートと有機栽培のコーヒーを頂きました。店を出た後、ふっと「夜の勝ちだな」とつぶやいてしまいました。おいしかったのですが、何ぶん私には“健康的過ぎ”でした。

 このような昼と夜が別形態の店が、ここ最近増えているようです。「昼はラーメン屋、夜は居酒屋」、「昼はカレー専門店、夜は立ち飲みのワイン居酒屋」など、いわゆる「二毛作店」と呼ばれる店です。

 二毛作化することで、設備費や食材、人材コストの削減が可能ですし、物件を昼も夜も有効に活用できるということが大きいのでしょう。

 人でも“二毛作”が可能な人はいるものです。

 物理学を専攻にしながら職業音楽家であったり、医者でありながらジャズシンガーであったり。もともと順番が逆で、音楽家が物理学を専攻にしたとか、ジャズシンガーが医師免許を取ったのかもしれませんが…。

 根っからの音痴で、小学校の“鼓笛隊”で小太鼓をたたいていた以来、楽器というものをさわったことがないような私にとっては、そのような「天が二物を与えた人」とか「二兎を追い、二兎を得た人」には憧れます。

 さらに「昼と夜は別の顔」を持つ二面性の男性には、「スパイ願望」のような魅力を感じます。

 「平凡な男子学生だけど、夜はクモの糸で悪人を退治する“スパイダーな男”」だったり、「地味で冴えない窓際係長だけど、夜は会長の任を遂行する“特命な係長”」だったり、「うだつの上がらない落ちこぼれの下級武士だけど、夜は社会の闇を切る“必殺な仕事人”」だったらなぁと考えて遠くを眺めたくなります。

 昼と夜の仕事の組み合わせの意外性に、“ギャップ萌え”するのでしょう。

 昼は「食」が専門とする大学教員、夜は「食」のブロガーって、あたりまえすぎて我ながらグッと来ませんね。