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夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

「受験生応援お菓子」はなぜダジャレ?

 本日、大学入試センター試験の1日目がありました。

 私は今年、センター入試監督の業務にあたらず、ほっとしています。受験生はもちろん大変ですが、センター試験運営の関係者にとっても、受験生に不都合がないように受験してもらうためかなり神経は消耗します。

 センター試験が行われると、本格的な受験シーズンの到来を感じます。

 「受験と食」を考えてみると、ここ数年はやや落ち着いた感じはありますが、この時期にコンビニやスーパーで「受験生応援お菓子」を目にするのはいわば風物詩となりました。

 近くのスーパーでも「受験生応援コーナー」がありましたので、その「受験生応援お菓子」を一部買ってきてみました。

 ネスレ「キット、サクラサクよ。キットカット」、明治「試験に受か〜る、ウカール」、東ハト「カナエルコーン」、亀田製菓「合格するぞ!ハッピーターン」の4品。

 それ以外にも、いろいろ受験応援お菓子はあるようですが*1、“ダジャレ”系製品のオンパレードとなっています。

 「受験用応援お菓子は、なぜダジャレ化してしまうのか」を考えてみます。

『キットカット』の成功が大きい

 受験応援お菓子の元祖ともいわれるのが、ネスレの『キットカット』でしょう。

 ネスレは『キットカット』が福岡の方言で「きっと勝つとぉ」に似ていることから受験生がお守り代わりとして購入しているという噂(諸説あり)を聞きつけて、受験生向けにシーズン限定商品を導入し、2003年から本格化にPRしています*2

 以来毎年この時期、期間限定で受験生応援の商品を投入してきました。今年で実に10年にもわたるロングランキャンペーンとなっています。

 今年のネスレの受験生応援キャンペーン「キット、サクラサクよ 受験生応援キャンペーン2013」*3も他社のお菓子メーカーのWebサイトと比べると熱が入っています。

(画像:ネスレより)

 他のお菓子メーカーも『キットカット』の成功にあやかって、さまざまな商品を市場に投入して来ましたが、受験生応援商品のさきがけが「きっと勝つ」というダジャレだったのが、商品のネーミングの方向性を決定づけたのかもしれません。

げんを担ぐ

 受験には大きなストレスがかかるため、受験生は藁にすがる思いで受験までの日々を過ごしていることでしょう。

 ナイーブな受験生は心の安定を図るために、受験が近づけば、普段は意識しない神にも仏にも、時には猫にでも頼りたくなる気持ちになるのは、受験を経験した人ならわかるでしょう。そんな中、身の回りのあらゆるものにげんを担ぎたくなるのはいわば当然です。

 そして、「食事」で受験の縁起を担ぐ、げんを担ぐことは定番となっています。

 昨年、マルハニチロホールディングスが行った「受験と食事」に関する調査*4で「受験日当日の朝食で用意したい(または用意したことがある)ゲン担ぎメニュー(n=1,000)」の消費者アンケートがありました。

 その結果、もっとも多くの人が答えたのは「とんかつ」で、もちろん「試験で勝つ」と「かつ」をかけています。

 次いで多かった答えは、勝利者「Winner」から「ウィンナー」。さらに「カツ丼」の後には、絶対にあきらめない「Never give up」の「ネバー」で「納豆」という順になっていました。

(画像:Mpacより)

 これだけのダジャレをこじつけられると、逆にあっぱれですね。ただ、「朝食」にとんかつやカツ丼などの胃もたれしそうな食事には、くれぐれも気をつけて頂きたいものです。

 「食」は、きっとげんを担がれやすい「何か」を持っているのかもしれません。

ダジャレのなごみ効果

 ダジャレによる「げん担ぎ」には、緊張感の緩和という作用があるのでしょう。

 思わず笑ってしまう(苦笑いしてしまう?)ユニークな語呂合わせの受験生応援お菓子で、受験へのストレスの1%ぐらいはやわらぐのかもしれません。

 普段は「寒い」と感じるようなダジャレも、受験シーズン時ばかりは不安な精神を安定させる力を持っています。

 大げさですが、受験生応援お菓子は、受験生の不安な気持ちをやわらげるという社会的役割を果たしているのかもしれません。

 また、お菓子メーカーが、「熱さまシート」「なめらかかと」などのダジャレの商品のキングメーカー小林製薬とは違って、おおっぴらに「ダジャレ商品」を市場に投入することが許されている時期は、唯一受験シーズンでしょう。

 お菓子メーカー側も、一年に一回くらいはおおっぴらにダジャレを言ってみたいのかもしれません。

おわりに

 受験生には縁起ものとしての「受験生応援お菓子」などをつまみながらリラックスし、脳への糖分と試験時の平常心を蓄えて試験に臨んで頂きたいものです。

 また、『キットカット』は、通常の月よりも大幅な売上アップを記録するようで、実は受験生から逆に“応援”してもらっているようですね。

*1:[http://advice-navi.com/examination/food/food_top.html:title=合格祈願 食べ物・お菓子] 受験だ!合格祈願

*2:[http://allabout.co.jp/gm/gc/297690/:title=受験時期になぜ売れる?キットカットの謎] [マーケティングを学ぶ] All About

*3:Nestle】[http://www.nestle.jp/brand/kit/campaign/juken2013/:title=キット、サクラサクよ 受験生応援キャンペーン2013]

*4:[http://www2.fgn.jp/mpac/_data/8/?d=201201_09:title=受験と食事に関する調査(2) ]| Mpac-マーケティング情報パック