夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

「つぶあんvsこしあん」論争の棚ぼた的解決法

 本年度、日本豆類協会という公益財団法人から研究費をいただき、小豆の「餡(あん)」の研究をしています。

 「あんの“おいしさ”の分子論的な解析」を行っているのですが、あんの奥深さにハマっています。

http://instagram.com/p/gxeJ1Iki4j/

(写真:仙台では知る人ぞ知る「さいちのおはぎ」)

 ところで、このあんの話になると、必ずと言っていいほど「つぶあん派か、こしあん派か」の論争が巻き起こります。私の経験からいうと、約80%の“勃発率”です。

「つぶあんの方がおいしいに決まってるっしょ。」

「いやいや、つぶあんは舌がざらつくし、皮が歯に引っかかるのがなんか許せない」

「やっぱり、こしあんの口の中で優しく溶けていく感じがいい。『赤福』が、つぶあんとかって想像できないでしょ」

「いやいやいや、たい焼きのあんが、こしあんだったらマジ発狂するレベル。やっぱ、つぶあんの“豆食べてる感”がないとあんこって感じがしない!!」

 等々の熱いディスカッションが繰り広げられます。

 「なぜこのような“争い”が起こるんだろう」と、つぶあんもこしあんも両方好きな私は思うのです

 甘味処であんみつを頼むと必ずといっていいほど「つぶあん、こしあんどちらしますか?」と聞かれたり、また、お饅頭に「つぶ」と「こし」のバリエーションがあることなどで、“派閥入り”を強制的に意識させられてしまうからなのでしょうか。はたまた、センター試験等によるマークシート方式の勉強のせいで、「択一選択」に慣らされてしまっているためなのか…。

 私は思うのです、「『つぶあんとこしあんのハーフ&ハーフ』があれば、どっちも楽しめてピースフルなんじゃないのか」と。

 邪推すると、人が二択を迫られて一つのものを選ぶ際、自分の選択肢の正当性を願う気持ちが強くなり、選ばなかったものを排他的に扱うようになってしまうのではないかと思います。

 つまり、つぶあんを選ぶと、選べなかったこしあんにある種の「敵対心」を感じ、逆にこしあんを選ぶと、つぶあんがやたら気になるといった具合に。

 あんに携わる小売業者の皆さん、つぶあん、こしあんとは別の“第3の選択肢”として、「ハーフ&ハーフ」をご準備頂ければ、長きに渡る「あんの仁義無き戦い」に終止符を打つことができるのではないかと思います。

 ソフトクリーム業界では、「ミックス」があるように…。

 そうすれば、“コウモリ的立場”の私にとって、つぶあん・こしあん選択時の“苦悩”から解き放たれ、どっちの味も味わえる“棚からぼたもち”的な解決法です(あんだけに)。

 提供する側としては、まぁ、そんなのめんどくさいっていう話ですね。