夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

「ファッションフード、あります。」

 「食」の研究をしていますが、日本人ほど食べものに興味がある国民はいないとつくづく感じます。

 日本ほど世界中のいろいろ料理が食べられる場所は稀有であり、TVのチャンネルを回せがひっきりなしに食の情報が流され、レストランではいたるところで料理の写真を収める風景が日本の風物詩ともなっています。

 その日本人の食への“執着心”が、日本の食品研究のレベル向上に繋がっていると思います。

 日本人ほど食を楽しみ、そして“消費”する国民はいないでしょう。

 現代の「日本の食」の激しい“流行り廃り”をわかりやすくまとめた“教科書”ともいえる本に出会いました。

 畑中三応子さんの『ファッションフード、あります。』という本です。

ファッションフード、あります。: はやりの食べ物クロニクル1970-2010

ファッションフード、あります。: はやりの食べ物クロニクル1970-2010

 

 流行の洋服や音楽、アートやマンガなどのポップカルチャーと同じ次元で消費される食べものを『ファッションフード』と名付けています。

 ファストフード、ティラミス、紅茶キノコ、モツ鍋、B級ご当地グルメ、キャラ弁、塩麹などなど。

 料理編集者として食の流行現象を実地で観察したという著者ならではの資料に基づいた情報密度の高い本となっています。

  食の流行というのは、その時代の“欲求“や“願望“をあらわす「鏡」のようなものです。

 ファッションフードは、その時代の人の考え、その時代の社会情勢をリアルに浮かび上がらせる格好の材料と言えるでしょう。

 著者は、日本のファストフードの全盛期は70年代からバブルまでで、今ファッションフードは世界中に侵攻中であると書いています。

 読後、私はこれから日本のファッションフードの行方、世界へのファッションフードへの波及に思いをしばし巡らしました。

 アイスクリームのワッフルのような装丁、昔のレストランのメニューのような目次、各時代ごとに色分けされたページ、「ファッションフード前史」には昔ながらのフォントの使用など、遊び心満載の本です。

 ポップな見た目とは裏腹に、中身は読めば読むほど、おもしろい発見が見つかる本です。

http://instagram.com/p/fIG5FRki9C/