夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

“鉄道食”な本3冊

 旅がしたい。

 新幹線で“びゅーっと”ではなく、飛行機で“さぁーっと”でもない、電車で“ガタンゴトンと”揺られながらのんびりとした旅がしたい。

 目的地をきっちり決めずに「駅弁」片手に電車に乗り込んで、車窓からの景色をぼやーっと眺めながら駅弁のおかずを“つついたりする”旅がしたい。

 気になった駅でふらっと降りてその駅の「駅そば」をさらりと食べて、見知らぬ街角をその街の住人かのようにぷらぷらする旅がしたい。

 昔懐かしい「食堂車」のある寝台列車に乗って日常生活から遠く離れ、珍しい鳥が見られるような場所を訪ねる旅がしたい。

 そんな、「“鉄道食”な旅」がしたいのです。

 しかし、今仕事が滞りがちて鉄旅したくてもできない人に(←ワタシも含む)せめて現実逃避できる本をご紹介します。

 交通新聞社さんが発行している交通新聞社新書の中で、「“鉄道食”三部作」と私が勝手に名付けている新書3冊です。

駅弁革命

 まずは、『駅弁革命 「東京の駅弁」にかけた料理人・横山勉の挑戦 』という本です。↓

駅弁革命―「東京の駅弁」にかけた料理人・横山勉の挑戦 (交通新聞社新書)

 

 誰しも「駅弁」への関心度は高いと思いますが、「食品開発」に興味がある人にとってもなかなかの良本です。

 駅弁の特徴は、冷めても美味しいのはもちろんのこと、時間が経っても雑菌が繁殖しないようにする、ある程度大量に調達できる食材を使って作る、お値段も許容範囲に収める、といった数々の「制限」がある中での開発になるため、企画・製作時にいろいろ考えなければいけないポイントがあります。

 難易度の高い食品開発として、駅弁を成功させるにはどういうプロセスが必要かを、料理人の苦悩、試行錯誤、挑戦を生々しく語っている好印象の本です。

ご当地「駅そば」劇場

 次が『ご当地「駅そば」劇場 48杯の丼で味わう日本全国駅そば物語』という本。↓

ご当地「駅そば」劇場―48杯の丼で味わう日本全国駅そば物語 (交通新聞社新書)

  私はそうだったのですが、「駅そば」ってどこの駅で食べても同じだと思っている人がきっと多いのではないでしょうか。

 この本は、北は北海道から南は九州までの駅そばを30年にわたって食べ歩いたという著者が、いろいろな「ご当地駅そば」を、写真入りで紹介しています。

 巻頭カラーの写真を見ると、普段イメージする「駅そば」の範疇を超えた、白鵬並の「懐の深さ」を感じます。

 また、『序幕 なぜご当地「駅そば」なのか』で著者は、次のように書いています。

当初は観光時間を充分に確保するために食事を手早くすませるという軽便性を追求していたのですが、地域性に触れるたびに興味が増大し、いつしか「駅そば」を食べるために観光を手早くすませるという、本末転倒な旅を多くするようになりました。

 このような“テーマのある旅”は、いいですね。

 しかし、なぜ“48杯”なのか。「ESB(駅そば)48」というグループ結成を企んでいるのかどうかは、読んでもわからずじまいでしたが、読むと駅そばが、無性に食べたくなる本です。

 食堂車乗務員物語

 最後は、『食堂車乗務員物語 あの頃、ご飯は石炭レンジで炊いていた』という本です。↓

食堂車乗務員物語―あの頃、ご飯は石炭レンジで炊いていた (交通新聞社新書)

 この本は、前の2冊と違って、今ではほとんど馴染みのない「食堂車」に関するお話です。

 食堂車の全盛期に乗務していた著者だからこそ書ける「体験談」やレアな「写真」などが盛りだくさんで、鉄道の歴史的にも貴重な本となっています。

 電子レンジが導入される前の食堂車では、ごはんを炊くのに必要な石炭がなくなると、蒸気機関士さんにバケツで石炭をもらったり、列車が急停車する時は、テーブルの食器を抑えてるように呼びかけたりするエピソードなどが綴られています。

 またこの本で、「スパゲティを茹でるズンドウの中に大きめの皿を一皿入れおくと列車が揺れてもお湯が飛び出さなかったりする」という豆知識を私は得ました。

 汽車好きで「一日中、汽車に乗っていたいから」という理由で食堂車のコックになった著者。

 鉄道の日(10月14日)に、食堂車のテーブル係だった女性と蒸気機関車の前で結婚式を挙げ、現在は「九州鉄道記念館」の副館長となっています。

 その九州鉄道記念館に、さいたま市にある「鉄道記念館」や大阪にある「大阪交通科学記念館」を運営してる関係者が来て、機関車を見てびっくりしたそうです。

 「どうしてこんなにピカピカなんですか?」

 「毎日のように磨いているからですよ」(by 著者)

 本には、鉄道ファンであることが、存分ににじみ出てくる文章が並んでいます。いい意味で「鉄オタの理想形」を見た気分がしました。

 

 あ”ー、鉄道食旅、余計にしたくなりました。 現実逃避は、見事に失敗…。

駅弁革命―「東京の駅弁」にかけた料理人・横山勉の挑戦 (交通新聞社新書)

駅弁革命―「東京の駅弁」にかけた料理人・横山勉の挑戦 (交通新聞社新書)

ご当地「駅そば」劇場―48杯の丼で味わう日本全国駅そば物語 (交通新聞社新書)

ご当地「駅そば」劇場―48杯の丼で味わう日本全国駅そば物語 (交通新聞社新書)

食堂車乗務員物語―あの頃、ご飯は石炭レンジで炊いていた (交通新聞社新書)

食堂車乗務員物語―あの頃、ご飯は石炭レンジで炊いていた (交通新聞社新書)