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夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

ウナギが無ければアナゴを食べればいいじゃない!

 今年の「土用の丑の日」は約2週間後の7月22日。

 コンビニなどで「うな重予約」の広告を見かけるようになりました。

 それと同時に、「ウナギ稚魚不漁で価格高騰」*1「ウナギ高騰で老舗閉店」*2「ニホンウナギ 絶滅危惧種指定を検討へ」*3といったニュースも例年以上に盛んに耳に入って来ています。

 スーパーマーケットなどで一尾1,000〜2,000円で売られているウナギを目にしますが、高すぎて私の手はなかなか伸びませんね。

 かのマリー・アントワネットが、「ウナギが無ければアナゴを食べればいいじゃない!」と言ったかどうかはわかりませんが、先日仙台駅近くにある「穴子料理専門店」に行って来ました。

 アナゴのだし巻き卵、アナゴの燻製、アナゴの一本寿司などなど、「穴子ずくし」を頂きました。

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 アナゴの刺身というのも初めて食べました。

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 “アナゴさん”、どれもおいしかったですが、アナゴとウナギ、魚の形は似ていてもやはり味は大きく違うものです。

 アナゴの脂質含有量はウナギの半分程度ですので、アナゴはあっさりしている分、脂によるふんわり感やコク・風味の点でウナギには完敗です。サッカーのスコアでいうと0-3ぐらいでしょうか。

 最近、三重大学で准教授の勝川俊雄先生が書かれた「日本のウナギ根絶作戦が、ついに最終段階」*4というタイトルの記事がかなり話題となりました。

 ようは、日本人、ウナギが大好き過ぎて、世界中のウナギを食べ尽くしてしまったということでしょう。

 ウナギの蒲焼のふわふわ感とにじみ出るうまい脂分、ウナギに絡まる芳醇な甘辛いたれ、そしてそのたれと日本人の主食であるご飯との抜群の相性。まぁ、嫌いになるはずがありません。

 ウナギ以外の水産資源では、マグロの乱獲・枯渇が心配されていますが、マグロの場合、近畿大学の完全養殖クロマグロ技術の発達もあるので「天然物が無ければ養殖物を食べればいいじゃない!」という時代になるでしょう。

 また、同じタンパク源である畜産資源に目を向けると、今後50年単位でみれば、世界的な人口増加によって、豚は人と同じ物を食べるため豚肉の生産量は減り、豚よりも少ない餌で得られる鶏肉の生産が増えると考えられています。

 「トンカツが無ければチキンカツを食べればいいじゃない!」となるでしょうか。

 さらに100年ぐらい時代が進み、世界中でタンパク質資源の争奪戦が加熱すれば「肉が無ければ虫を食べればいいじゃない!」となるかもしれません*5

 これから「消えゆく食材」、今後きっと増えていくことでしょう。ウナギはその序章にすぎないのかもしれません。

 私たちは、次に食べる「うな丼」や「うな重」が人生で最後になるかもしれないというスタンスで“ウナギさん”と対峙しなければならないかもしれませんね。

 

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