夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

タバコ、シイタケ、シナモンのにおい

 ブログを「はてなダイアリー」から「はてなブログ」に引っ越しましたが、現実世界でも引っ越しました。

 東日本大震災でイレギュラーの引っ越しが2年前にあり、丸2年目の更新時に、別の家つまり現在の家に引っ越しました。約半月前のことです。

 私の住んでいる仙台の内陸部は、津波被害による沿岸部から人の移動もあり、慢性的な物件不足が続いています。なかなか希望の物件が見つからず、だいぶ不動産のWebサイトをサーベイしました。

 今の引っ越し先の物件は希望条件にピッタリだったので、前に住んでいた方が退去する前に、家の中を見ずに契約しましました。

 実際入居してみると、壁や天井から強烈なタバコ臭が漂ってくるという家でした…。

 私はタバコを吸わないので、その臭いがそもそも苦手なこともありますが、イヤな臭いを我慢するのは難しいものです。

 そもそもにおいの情報、いわゆる「嗅覚情報」は、鼻の中にある「嗅細胞」から直接脳内の「嗅球」という場所に投射されます。

 そして解剖学的には、偏桃体、海馬など、好き嫌いや記憶を司る部分に投射されることから、においの刺激は「情動」や「記憶」に関与しやすいといわれています。

  食べものの好き嫌いの場合、味というより「におい」が苦手という方がきっと多いことでしょう。

 そのため、においが独特な食べもの、例えばシイタケやシナモンなどが嫌いという人は、それなりの割合でいます。

 そして、なかなかその苦手を克服できないものです。

 私も、小さい頃苦手な野菜がたくさんありましたが、香りの独特なシイタケだけは未だに仲良くなれません。

 タバコや食べものの苦手は、その「におい」と「思い出」によって決定されるのでしょう。それは、においの脳での感じ方に影響さえているのかもしれません。

 においの学習は、胎児の時期から始まっています。

 例えば、授乳中の母親のニンニク消費量と乳児のニンニクのにおいがする母乳に対する摂取量や授乳中の行動との関係について調べた研究があります*1

 その研究では、母親の母乳がニンニク臭に暴露していない乳児は、ニンニクを食べていた母親の乳児に比べて、ニンニク臭のする母乳を飲むために多くの時間を要したそうです。

 においの好き嫌いは「経験」というか「学習」が強く関与するのでしょう。

 さあ、家のタバコ臭さを減らすにはどうしたらいいものか…。

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*1:The effects of repeated exposure to garlic-flavored milk on the nursling's behavior. Mennella JA, Beauchamp GK. Pediatr Res. 1993 Dec;34(6):805-8.