夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

「オトナの研究者」が「オトナの食品」を食べる時

 10月も、はや最終週となりました。今月、Twitterの「ツイートまとめ(はてなブックマーク経由)」の記事はありましたが、今月最初のブログです。

 10月から大学の後期がスタートし、大学祭など、もろもろのイベントが目白押しでした。山中教授のノーベル賞受賞のおめでたいニュースや、このブログで書きたい食べものネタもけっこうありましたが、結局書けずじまいでした。

 この時期、ブロブが更新できなかったのは、大学人の方であればわかっていただけることでしょう。国の競争的研究資金である科学研究費補助金、いわゆる「科研費(かけんひ)」という公募申請の締切があったためです。

 特に今年は、これまで申請していた「若手研究」から「基盤研究」への移行もあり、少なからず申請書書きにプレッシャーを感じていました。

 科研費の「若手研究」は、39歳以下の研究者でないと応募できません。「若手研究」は、この応募できる年齢制限があるため、研究実績の多いベテラン研究者と争わなくてすむため(「基盤研究」は年齢制限がない)、「若手」であればほとんどがこちらに応募します。

 私の年齢ですと、今年度までは「若手研究」で応募できたのですが、「若手研究」に受給回数制限が導入され、受給回数が最大2回までに制限されることとなりました。そのため、強制的に「基盤研究」への挑戦となりました。

 例えるならば、

    • 柔道でいうと、「軽量級」の階級に出ていた選手が、突如「無差別級」に出るようなもの
    • プロレスでいうと、体重100kg未満の選手を対象としているジュニアヘビー級のレスラーが、体重制限のないヘビー級に初参戦するようなもの
    • フィギュアスケートとでいうと、年齢制限のあるジュニア選手権に出ていた選手が、年齢制限のないシニアのクラスに初登場するようなもの

でしょうか。ピントがずれている気もしますが…。

 先週末に、大学の事務に魂を込めて書いた書類は提出しましたので、あとは来年春の「判決」を待つだけです。

 申請書を書きながらぼやっと思っていたのは、『研究者はいつまでが「若手」で、いつから「若手」じゃなくなるのか?』ということです。

 科研費の「若手研究」の応募枠的には、『「若手研究者」は「39歳以下」』ということでしょう。

 平成21年度以前の「若手研究」は、「37歳以下」でした。他の民間の競争的研究資金ですと、若手の年齢が「35歳以下」とされているものも多くあります。時代とともに、研究者の若手の年齢が上がっている傾向を感じています。

 35〜39歳あたりが、若手研究者とそうじゃない研究者の「ボーダーライン」でしょう。私はいまその境界の上に立っているので、ふわっふわした気分なのです。

 私は、大学の教員になって13年目です。民間企業であれば、13年勤めて「自分はまだ若手だ」と発するのはいささか躊躇することでしょう。自分はまだ半人前といっているようなものですから。

 研究者は、職人のように専門性が高く、一人前になるまでの修行期間が長いので、40歳未満はまだまだ未熟な「若手」なのでしょうが、何となく四十路直前のおじさんなのに「若手」というタグを貼られるのが、社会的にみるとしっくりこないのです。

 しかし一方で、これまで「若手研究者」として研究助成枠などを優遇されてきた特権が、次第に失われていく一抹のさみしさもあります。大人になりたくない「ピーターパン症候群」研究者でしょうか。

 以前の私のブログ*1にも書きましたが、「大人のキリンレモン」、「大人の健康・カルピス」、「キットカット オトナの甘さ」など、ここ数年ずっと、「オトナ」ブームが続いています。

 これらの「オトナの食品」でも食べながら、中身のある「オトナの研究者」になりたいものです。まぁ、本当の大人は、自分で自分のこと「オトナ」って言わないんですけどね。

*1:[http://d.hatena.ne.jp/yashoku/20100621/p1:title=大人の食べ物] - 夜食日記