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夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

虫の眼、鳥の眼、亀の眼、カメレオンの眼

 私はふだん眼鏡をかけているのですが、その眼鏡の鼻あての部分が壊れてしまい、先日、新調しました。今の眼鏡は、軽量化が進んでいますね。掛け心地がとてもいいです。

 眼鏡を変えてもあまり気付かれないことに、一抹のさみしさを感じる今日この頃です。

 ところで、仕事をする上で大事だといわれる2つの視点に、「虫の眼・鳥の眼」というものがあります。

 「虫の眼で問題をクローズアップしてより深く考え、一方で、鳥の眼で俯瞰して全体像をとらえよ」というものです。

 科学者は、研究する上で「虫の眼」を磨き、自分の専門性を深め、“近眼化”していくのは当然のことです。しかし、「鳥の眼」は、意識して磨こうと思わなければ、なかなかブラッシュアップされにくいものです。

 ふだん研究している時もそうですが、特に学会などに参加する際は、自分の専門に近いところの知識を得るだけではなく、できるだけ研究の「全体像」をとらえようと心掛けてはいます。

 例えば、先日参加した国際食品科学技術連合IUFoST@ブラジルのポスター発表における全トピックスを下に挙げてみます。

  • Food Analysis
  • Food Biochemistry
  • Food Biotechnology
  • Food Chemistry
  • Food Microbiology
  • Food Safety
  • Sensory and Consumer Science
  • Bioactive Compounds and Functional Foods
  • Food and Nutrition
  • Food Security
  • Nanotechnology
  • Food Processing
  • Food Engineering
  • Food Packaging

 食品科学・食品技術分野で専門がどのようなジャンルでカテゴライズされているのか、また、発表演題数などから各ジャンルの大きさなどわかり、その大枠をとらえやすくなります。個人的には、食品系でもナノテクNanotechnologyがひとつのトピックとして取り上げられているのが新鮮でした。

 さらに、研究する上で、「虫の眼・鳥の眼」以外にも個人的に大事だと思っているもう“二つの眼”があります。

 まず一つ目は、「時代の変化、トレンドを感じる眼」です。

 以前2006年のこのIUFoSTの国際学会にも参加しましたが、その時と比べて今回はBioactive Compounds and Functional Foods分野の発表数が飛躍的に多くなっていることを肌で感じました。この分野は日本が最も進んでいたので、世界が日本に追いついてきたという印象です。

 さらに、食品系の学会と栄養系の学会の研究分野がオーバーラップする面積が、年々大きくなっているように感じます。

 このように、長い時間軸において変化を見る目(長生きするイメージの動物からとって「亀の眼」とでもしましょうか)も、仕事進めていく上で大事なことだと思っています。

 もう一つは、特に科学者・研究者にとって最も重要なヴィションである、「人とは違う変わった眼」です。これまで誰も知らない「もの」「事象」「解釈」を見つけるのが科学者ですので、ちょっと変わった別のアングルからの視点も大切です。

 ヒトには見えない紫外線が見えて、変わった生態を持つ動物から「カメレオンの眼」とでも名付けましょうか。

 これら虫の眼、鳥の眼、亀の眼、カメレオンの眼を持つ「マルチアングル四次元変人眼鏡」が、私の理想とする眼鏡です。