夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

「宇宙料理学」「宇宙調理学」の登場!?

 TIME.comで見た「宇宙食」に関するニュース*1で思ったことをひとつ。


(TIME.comより)

 人類の宇宙への夢は、尽きないものです。今、もっとも期待度の大きい宇宙分野の夢は、やはり「火星有人探査計画」でしょう。

 火星への有人探査には、2、3年必要とされています。そうなると、これまでの“フリーズドライ”といった「宇宙食」では不十分であると考えられ始めています。

 長い無重力環境では骨と筋肉の損失の恐れがあり、またストレスフルな閉鎖空間で、飽きずにおいしく栄養ある「宇宙食」を食べ続けるには、「宇宙飛行士が“料理”する」ことが大切と考えてられているようです。

 実際、NASAの宇宙船の乗組員が、実際にホテルのシェフの指導の下でクッキングを勉強し、 新鮮な食材でなくても、寿司、パエリア、ピザ、クロワッサンなどの驚くほど多種多様な料理を考案しています。 具体的には、手巻きとにぎり寿司は、缶詰の魚や漬物で作ったそうで、乗組員いわく「素晴らしい味」だそうです。

 そのうち、宇宙飛行士のトレーニング項目に、宇宙向けの「料理教室」が必修科目になるのかもしれません。「スペース・クッキング・スタジオ space cooking studio」ですね。なんか、カッコいい響きだ。

 また、6人の男性たちがロシアにある火星往復飛行用の模擬実験施設に乗り込んだ火星有人探査シミュレーション計画「Mars500」が、2010年6月〜2011年11月までの520日間行われました*2

 そのプロジェクトの様子をみてみると、野菜を育てたり、ピザを作ったりしています。宇宙先進国のロシアでも、「農業」と「料理」は、長期宇宙飛行では不可欠と考えているのでしょうね。


ESA - Mars500 - Mars500 photo galleryより)

 宇宙で本格的に料理するとなると、どんな問題があるのかをおのずと考えてしまいます。

 安全を確保するのが最優先でしょうから、衛生面の問題解決が不可欠です。また、無重力なので、加熱などの調理方法もかなり限定されるでしょう。

 無重力で“うまい”調理技術が開発されれば、地上よりもよりおいしい料理ができるかもしれません。たとえば、チャーハンなどは、地上で作るよりも宇宙で作ったほうがよりパラパラしたものに仕上がるとか。

 「無重力料理法」とか「無重力調理法」が発達し、やがて地上でもその手法が使われるようになり、新しい料理の開発が進む可能性もあるかもしれません。そして、「宇宙料理」の専門店ができるようなことも、まんざら絵空事ではないかも。

 地上で作る新しい「宇宙食」の開発にも興味がありますが、これからは、宇宙飛行士が長い宇宙生活の中で料理するための手法や手段の開発がホットな気がします。すなわち、「宇宙料理法」や「宇宙調理法」に目が離せません。

 研究費をいただけるならば、是非とも研究したいものです。「宇宙料理学」や「宇宙調理学」という新しい分野を“探査”したい!?ですね。

*1:[http://healthland.time.com/2012/07/11/what-tastes-good-in-outer-space-cooking-for-mars-bound-travelers/?iid=hl-main-mostpop1:title=What Tastes Good in Outer Space? Cooking for Mars-Bound Travelers] | Healthland | TIME.com

*2:ESA - [http://www.esa.int/SPECIALS/Mars500/index.html:title=Mars500]