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夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

「食は人なり」?それとも「人は食なり」?

 前回のつづき。

 前のブログでは、食べものの持つステレオタイプで、それを食べた人の「女性らしさ、男性らしさ」や「パーソナリティ」などが判断される「食は人となり仮説」を紹介しました。

 プランスの有名な美食家、ブリア・サヴァランの著書「美味礼賛」の中に、
ふだん何を食べているのか言ってごらんなさい、そしてあなたがどんな人だか言ってみせましょう
という有名なフレーズがあります。

 それは、まさに「食は人なり」を表す言葉でしょう。


(ジャン・アンテルム・ブリア=サヴァラン - Wikipediaより)

 大学院の食品開発学特論の講義の中で院生とそんな話しているうちに、「その逆もあるんじゃない?」という話になりました。

 つまり、「食は人なり」ではなく、「人は食なり」という考えです。

 例を挙げましょう。

 たとえば、自分のお気に入りの著名人やタレントが、CMで食べているものを食べたいと思ったことはないでしょうか。

 また、「エネルギー供給するぞ!」タイプの栄養ドリンクの宣伝には肉体派の俳優が、かわいいお菓子のCMには愛らしい子役やアイドルなどが起用されています。

 提供する側が、いい人のイメージ、エネルギッシュな人のイメージ、キュートな人のイメージを、それらの食べものに影響させようとしています。

 「好きな人が食べているものが、好きになる」。これが、いわゆる「光背効果、ハロー効果(halo effect)」というものです。

 とくに食品に限らず、買ってもらいたい商品のPRに、“光”の大きい芸能人を起用することによって、その商品の価値が飛躍的に上がります。だから、好感度の高い芸能人は重宝がられるのでしょう。

 社会的なイメージがすでに固まっている商品や料理などに、このハロー効果は発揮しにくいでしょうが、色がまだ付いていない新商品には、いい人のイメージの“移植”が宣伝上、盛んに行われています。

 そのような「人のイメージ」が長い間積み重なって、商品はブランド化していくのでしょう。

 工業製品や電化製品など、数ある商品の中でも、「食べものは、人が食べることが前提」ですので、人と食べもののイメージが結び付けやすい対象同士なのかもしれません。

 もっとよく考えてみると、女性的なイメージのあるパスタも、男性的なイメージのあるとんかつも、もとは、それらを食べている「たくさんの人たちのイメージ」が何層も何層も重なって、今の「食べもののイメージ」が確立してきたのでしょう。

 時系列でいうと、「食べている人のイメージが、食品に定着する」→「定着した食品のイメージが、にまた移る」の2ステップで、私たちは「人と食との関係」を感じているのかもしれません。

 ですから、「食は人となり仮説」の前に、私は「人は食となり仮説」を唱えたいなと思っています。