夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

「どうして海外のたまごの黄身の色は薄いんですか?」

 先日、学生と話をしていた時に、出てきた話題。

 「せんせー、私、春休みにカナダに短期留学したんですけど、向こうの卵の黄身の色が薄くて驚きました。あれ、なんでですか?」

 私もカナダに研究留学していたので、よくその色がわかりますが、黄色がとても“うっすーい”のです。

 わたし的には、卵黄の色よりも、パック内の卵が結構な確率で割れているのがショックでした。日本に帰ってきてからしばらくの間、卵を買う前に割れていないかチェックする習慣が抜けませんでしたから。

 このブログでも以前「白い卵黄」の話*1をしましたが、もともと卵の色は、卵を産むニワトリが自分の体内で合成しているわけではなく、エサのなかの黄色の成分が黄身に移行して、卵黄は黄色になります。

 卵黄のエサの黄色の成分は、ルテインやゼアキサンチンと呼ばれる成分で、トウモロコシやホウレンソウなどに多く入っています。

 ただ、トウモロコシだけ食べていれば、日本の卵のような鮮やかな黄色というか橙色の卵黄になるわけではありません。

 日本の卵には、ニワトリのエサに「色あげ剤」という黄色を濃くするエサを食べさせて、“あの色”にしていることが多いです。色あげ剤には、ルテインが多く含まれている「マリーゴールド」の花弁抽出物などがよく使われています。

 ルテインやゼアキサンチンは「カロテノイド色素」と呼ばれる色素ですが、おなじカロテノイド色素でも、ニンジンに含まれるβ-カロチンやトマトに含まれるリコピンなどは卵にあまり移行しないことがわかっています。

 基本的には、水に溶けるものには卵に移行しにくく、逆に脂に溶けるものは比較的移行しやすいため、脂溶性のカラフルな色の成分をニワトリに食べさせると、いろいろな色の卵ができることは、業界的にはいわば常識となっています。

 こんなカラフルな黄身の卵を作ることはどうってことなないわけです。

 また、鮮やかな赤い色が特徴のフラミンゴも、あの羽の色はフラミンゴが自分で作り出している訳ではなく、エサの中の赤いカロテノイド色素が移行したものです。

 そのため、エサの中の赤い成分が少なくなると、フラミンゴの赤い色は薄くなっていきます。

 フラミンゴもエサの中にいろいろな色の成分を入れて、その色の成分が羽に移行すれば、きっとこんなフラミンゴも見れられることでしょう。

 学生に、カラフル黄色の話からフラミンゴレンジャーの話まで小一時間ぐらい話したかったのですが、5分くらいのダイジェスト版でさっくりとお答えしました。

*1:[http://d.hatena.ne.jp/yashoku/20090508/p1:title=白いイチゴ、白いたい焼き、白い卵黄] - 食品研究者の夜食日記