夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

肥満なのは調理された食べ物を食べているから? ー体重の増加は食品の調理方法に依存するという研究からー

 食べ物は体の“燃料”ですが、 「その燃料のエネルギー量は、食べ物に含まれる“カロリー”だけではなく、その“調理方法”にも関係している」という研究が11/7の米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences)のオンライン版に掲載されました。

Proc Natl Acad Sci U S A. 2011 Nov 7.
Energetic consequences of thermal and nonthermal food processing.
Carmody RN, Weintraub GS, Wrangham RW.
Department of Human Evolutionary Biology, Peabody Museum, Harvard University, Cambridge, MA 02138.

 著者のハーバード大学の科学者らは、マウスに生のサツマイモ・牛肉と、調理したサツマイモ・牛肉を与えた場合、同じカロリー量であっても、調理した食べ物を与えた方が生の食べ物を与えたよりも体重の増加をもたらすことを明らかにしました。

 この結果は、ヒトは食べ物を調理することによってより、高いエネルギーを得ること可能にしてきたことを意味しています。つまりこの論文は、ヒトの歴史において、調理によるエネルギーの効率的な摂取が、より大きな体とより複雑な頭脳を持つ人間の誕生を可能にしたということを科学的に裏付ける点で重要であるといえます。

 しかし、現代の日本のような飽食社会では、調理・加工されたエネルギー効率のいい食べ物は体重が増え過ぎるという点で、調理することがある意味「負の遺産」となっています。かといって、肥満を避けるために生食に戻るのは、ユッケの食中毒事件でわかるように食の安全面で大変危険であることは言うまでもありませんね。