夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

究極の宝探し 〜ウナギの産卵場所の発見@鰻博覧会〜

 本日は土用の丑の日。今晩、鰻の蒲焼を召し上がった方も多いのではないでしょうか。

 今月、こんなニュースを目にしていました。

産卵場所解明へ…マリアナ海嶺でウナギの卵採取 : 科学 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 東京大学大気海洋研究所などの研究グループは10日、グアム島の西方海域で採取したニホンウナギの卵を公開した。

 同グループは2009年に世界で初めて31個の卵の採取に成功。今回はそれを上回る147個を採取したことで、精密な産卵場所の解明などに役立つと期待される。16日から同大総合研究博物館で始まる「鰻博覧会」で展示される。

 卵は、6月29日の未明と深夜、水深約150〜180メートルの「西マリアナ海嶺」の南端2か所で採取された。直径約1・6ミリで、産卵直後から2日経過したものまで含まれていた。捕食から逃れるため、新月(今回は7月1日)の2〜4日前に同じ海域で毎晩、産卵しているものとみられる。

(2011年7月11日11時18分 読売新聞)

 そこで、先日の連休、知り合いの先生に会いに東京に行った際、気になっていたので見てきました「鰻博覧会 EEL EXPO TOKYO」。

 私たちの食卓にとって身近な蒲焼となるウナギは、元々海の彼方から何千キロも泳いでやって来ます。そして、その産卵場所はずっと不明で、長年の謎、現代に残る数少ないミステリーでした。

 そして、念願のウナギの卵がマリアナ沖で発見されたのが、ごくごく最近の2009年です。魚業界では、ウナギの産卵場所の発見は、きっと究極の「宝探し」だったことでしょう。

 実際に採取したウナギの卵が展示してありましたが、見ると大きさは手芸用の小さなビーズぐらいでした。私が部屋の床にそのサイズのビーズを落としたら、間違いなく探せない(探す気力が起こらない)くらいの大きさです。

 その小さな“ビーズ”を、とてつもなく広い大海原から探しだしたときの感動は、鼻血が出るレベルを遥かに超えているだろうなと、実際にその卵を目の前にすると鮮明に感じました。

 展示スペースでその「卵探し」の映像が流れていましたが、機器を駆使したハイテクな方法と、網ですくったものを人海戦術で分けていくローテクな方法が入り交じっているのが印象的でした。

 そして、そのウナギ研究者と研究者の卵たちが真剣な眼差しで作業に向かう表情に、同じ研究者として最大限の刺激を受けた、そんな今年の「海の日」でした。