夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

震災アウトドア生活を振り返って

 新潟から私の研究室宛に、素敵な「食品群」が素敵なメッセージと共に送られてきました。しかも、ダンボール箱いっぱいに。

 送っていただいたOさん、本当にありがとうございます。餅1個1個、ご飯1粒1粒を、消化管全体と体全体で噛み締めていただきたいと思います。

 震災直後の電気やガスなどのライフラインを断たれていた間、生きるエネルギーを支えてくれたものの一つが、まさに送っていただいた「餅」でした。自宅の冷凍庫や棚の奥でずっと休眠していた「餅」や「乾麺」には本当に世話になりました。

 さらに、調理道具としては、私が普段アウトドアで使っていた携帯用の「湯沸しセット」が大いに役立ちました。小さな収納ケースに、プロパン燃料、バーナーガスコンロ、チタン製のポット、ライト付きライターが入っています。

 これを持っていたので、震災直後の外気温が氷点下の寒い状態でも、暖かな食事にありつくことができました。1°Cでも暖かい食事の「ありがたみ」は、震災を経験された方はわかって頂けると思います。

 また、パスタのカッペリーニは細くて茹で上がりが早いので震災食向けであること、乾麺の"ほうとう”はスナック感覚でぼりぼり食べられること、春雨スープの元が味のバリエーション広げるのに役立つことなど、震災生活時の新たな発見もありました。

 外部からの食料支援がなくても、おそらく夫婦2人が1ヶ月暮らせるだけの、食料と燃料はわが家にはありました。問題なのは、やはり「水の確保」でしょう。

 3.11の大きな地震後、運良く?住んでいたマンションの貯水槽が壊れ、破裂した水道管から水が約10日間ほど絶えずあふれ出していました。わが家では、「命の泉」と呼んでいました。

 特に、水などは備蓄していなかったので、この水の存在が、飲料水として、さらにトイレ用の水としてマンション住民やその周辺の方々に大いに役立ちました。この点ではとても恵まれていました。

 しかし、震災に備えて事前どんなに準備をしておいても、津波で家ごと持って行かれたり、直下型の地震が起きれば、その準備は全く無意味となることを今回の震災で多くの方が感じたことと思います。

 そこを今後、各自がどう捉えるかでしょう。準備しても無意味だから何もしないのか、それでも出来る限りの準備をしておくのか。

 震災による「強制アウトドア生活」はもうこりごりですが、アウトドア派で心底良かったと私は思っています。それは、アウトドアグッズを持っていたということもありますが、不便な状況下でも生活できるという“心構え”をあらかじめ持っていたということが大きいからです。