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夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

宮城県南三陸町の「キラキラ丼」シリーズ

食と震災 食の思い出

 今日、散らかっていた大学での私の部屋を掃除していたら、このようなパンプレットを見つけました。

 以前、このブログでも紹介した「南三陸キラキラいくら丼」のチラシです。魚介類に目のない私にとって、とても魅力的なチラシだったので、捨てずに取っておいたのでしょう。

 昨年末に、2度ほど、宮城県 南三陸町に行きました。1回目は妻とプライベートで、2回目は研究室の学生と実験用のサンプル採取に出かけました。どちらもお昼にその「南三陸キラキラいくら丼」を食べました。

 その時撮った写真↓を見てもらえれば、リアルに“キラキラ”しているのが感じ取ってもらえると思います。

 ブログを読み返してみると、「キラキラ丼のファンクラブがあったら入りたい」と熱い想いを書いていますね。そして、春は「キラキラ春つげ丼」、夏は「キラキラうに丼」を食べに行くとも書いていました。

 しかし、私がまた南三陸町に「キラキラ丼」を食べに行く前に、あの大津波が町を襲ってしまいました。

 キラキラ丼の具材を見ても、三陸の海は、本当に魚介の宝庫だというのがわかるのではないかと思います。

 マグロ、サケ、サンマ、サバ、カツオ、ヒラメ、イカ、タコ、ケガニ、アワビ、ウニ、ホタテ、ツブ、ホッキ、ワカメ、コンブ、などなど。

 三陸では、およそ200種類以上に及ぶ魚介類が水揚げされていますが、種類だけでなくその漁獲量も多く(水産物のシェアが全国の約2割)、これが世界三大漁場の一つといわれている所以です。

 この豊かさは、一般に知られているように「暖流と寒流がぶつかる場所だから両方の潮に乗ってきた魚が獲れる」だけではここまで豊かな海は形成されません。三陸の豊かな海、そこで育まれるおいしさには、「秘密」があります。

 私が以前から持っている本に「三陸海岸 旬の魚と料理図鑑」という、東北のブロック紙である河北新報社さんが発行しているものがあります。

 その中のプロローグの文章を紹介します。書いているのは、学部は違いますが、私が以前勤めていた北里大学の海洋生命科学部准教授の朝日田 卓さんです。

極上の魚介類の聖地「三陸〜海の四季と美しい海岸線が育み、人々がそれを支える奇跡の海〜

 三陸の海は「奇跡の海」である。これほどさまざまな好条件がそろっている海は他にはないほどである。海流だけでなく、海岸地形や海底地形、間近に山が迫る陸の地形、沖合いにある深海、また地球上における位置までが絶妙のバランスをもって存在する土地、それが三陸なのである。
(中略)
 地形や地球上の位置といった環境をハードウェア、四季や海流、潮流、海に注ぐ淡水などの条件をソフトウェアとすれば、その両者のベストマッチによって「おいしさ」が形作られているわけであるが、三陸にはもう一つの条件「人々の心」がある。ハードウェアとソフトウェアになぞらえて、この心は「ハートウェア」と呼ばれるが、このハートウェアが三陸のおいしさの最大の秘密なのであろう。

 「三陸きらきら丼」、復活したら私は必ずまた南三陸町に食べに行きます。

 ただ、南三陸町の皆さん、今は疲れた体をゆっくりと休めて下さい。私は10年先でも20年先でもずっとその日を待っていますから。