夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

今の日本は、原発事故による風評被害の“被害者”にも“加害者”にもなりうるという現状の中で

今、原発事故による風評被害は、国内と国外の「二重構造」になっています。

つまり、世界的にみると、日本は海外の国から風評被害にさらされ、国内をみると、福島原発近くの住民はその他の日本の地域の方からの風評被害にさらされています。

今後、今すでにそうかもしれませんが、原発の近く遠く、放射線量の高い低いに関わらず、「日本」とう“タグ”だけで、危険な場所とか、日本産の食品は危ないという風潮が世界的に蔓延してしまうのではないかという恐れを私は感じています。

福島原発から遠く離れた京都でも観光客が激減しているというニュースがありました。日本の安全な場所に在住の外国人の方にも、自国から退避勧告が出ていることも風評被害を助長させているでしょう。

世界的にみれば、すべての日本人、すべての日本産の食品が風評被害にさらされる危険性をはらんでいます。

私が今最も恐れているのは、原発事故と関係のない地域の日本人の方が、ウチの商品は「福島県産や北関東産ではないから安心です」というかネガティブキャンペーンを日本国内や海外にしてしまわないかということです。

そのような動きは、福島県産や北関東産が暗に危険だと言っているようなものです。

食品の安全は、危険物質が法律で定められた基準値を越しているか越していないかということのみで決まるものです。決して産地ではありません。
海外から向けられる風評被害の目をさらに福島や北関東に向けるのではなく、信頼できる情報を元に科学的な目を持って行動することが今の日本人すべてに強く求められています。

食の“安全”ではなく、食の“安心”は、決して科学的なデータでは得られないということは、十二分に承知しています*1

しかし、原発事故が終息していない真っ最中の今こそ、風評被害の加害者、被害者両方の立場になり得る今こそ、「リスクリテラシー」を本気で学ばなければならない時期なのではないかと思います。

*1:[http://d.hatena.ne.jp/yashoku/20101124/p1:title=理性や理屈だけでご飯が食べられるか?] - 食品研究者の夜食日記