夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

私たちは「福島県産の牛乳、茨城県産のほうれん草」を食べることができるか

皆さんの、福島県のイメージはどのようなもの“だった”でしょうか?

高校卒業まで福島で育った私はよく知っています。非常に影が薄い県であったということを。今は、原発事故という最悪な形で、私のふるさとが世界中で有名になってしまいました。

私の福島県人のイメージは、人情味が厚くて我慢強く、アピールが下手で控えめというものです。想像するのは家族や親戚、友人達、そして私自身です。

なぜ“東北”の福島に、“東京”電力の原子力発電所が建ってしまったのか。福島県人の「人の良さ」が“付け入られた”のだと思います。

今、テレビのレポーターやコメンテーターの先生が話す、安全な所にいる“外から”の、現場の想像力のない“ふやけた”コメントは、私の心には全く響きません。むしろ、怒りさえ感じることが多いです。

また、東京電力の電気の恩恵にこれまで預かっていた方、今も預かっている方、すべての方に言いたいです。

福島原発の事故は、決して他人事ではではなく、今も原発の恐怖に怯えながら近くにいざるをえない福島県人、避難して生まれ育った土地を離れざるをえなかった福島県人と一緒に“腹をくくる”必要があります。

今後の財政面の全面的な支援はもちろんのこと、今は一人一人が農産物の風評被害を最大限防がなければなりません。

放射線量が食品衛生法の基準値を超えた福島県産の牛乳や茨城県産のほうれん草を買ってくれといっているのでは毛頭ありません。「それらの産地の基準値以下の食品は、普通の食品として扱って下さい」、ただそれだけです。

放射性物質の危険性は、「トマトに含まれている毒」*1や「低残留農薬の農産物」*2と同じ量の概念で説明できます。

真面目に野菜を作ってきた人や牛乳を絞ってきた方が、一体どんな悪いことをしたのでしょうか?

風評被害の元は、放射性物質と同じように目に見えず、さらに計器でも測定することのできない各個人のこころに潜むものです。理性的に対応しさえすれば、防ぐことができます。

多くの人の無理解で、被災者の人々をこれ以上踏みにじらないで頂きたいと思います。

地震や津波からの復興は、ゼロからの復興ですが、原発事故付近の復興は、放射能汚染という大きなマイナスからの復興です。

原発の問題を外からではなく、“内から”考えて下さい。何とぞ、よろしくお願いします。

*1:[http://d.hatena.ne.jp/yashoku/20090529/p1:title=「皆さんが食べているトマトには毒が入っています」] - 食品研究者の夜食日記

*2:[http://d.hatena.ne.jp/yashoku/20100831/p1:title=”低残留農薬”の農産物はより安全?] - 食品研究者の夜食日記