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夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

同じ草食なら、ステゴザウルスのような草食男子に!

 この前の土曜の夜、妻と外で食事をしました。帰り際、もうちょっとなにか飲みたいということになり、夜遅くまでお酒と紅茶を出してくれるお店に行きました。夜9時か10時ぐらいのことです。

 そのお店のドアを開けて、店の中に広がっていた光景が私にとって実に新鮮でした。

 20代前半くらいの男の子5人組が、仲良く紅茶を飲んでしました。

 見た目は優しく、頼りなさそうな、いかにも「草食系」の男の子たちでした。どこかで飲んだ帰りという訳でもなさそうで、まったりとした雰囲気の中に身を委ねていました。かわいいティーコージーで保温されたポットから自分で紅茶をカップに注ぎ、静かな声で話していました。

 大学でも男子学生をたくさん見ていましたが、ここまで草食化を感じさせる光景は初めてでした。

 居酒屋で大声で話している年配の方よりは、はるかに好感がもてましたが、外へのエネルギーを微塵も感じさせないその見事な草食っぷりに、何か”もやもやっ”としたものを感じてしまいました。

 人の考え方は、もちろん人それぞれ違いますが、「時代」が与える影響は、決して小さくないでしょう。バブル期はバブル期の、就職氷河期就職氷河期の、現代は現代のそれぞれの時代の影響が、その人個人のものの考え方に大きく反映しています。

 子供の性格はいわば、「その時代が求める気分」によってある程度形作られるので、現代の男性の草食化は、いわば今の大人達が望んた結果でもあります。大人が手に持て余すようなやんちゃな子供よりも、手のかからない大人の言うことをよくきく優しい子どもを社会が望んだ結果が、今の草食男子ブームに繋がっているのでしょう。

 男同士で夜に紅茶を飲むのが悪いと言っている訳では決してありません。私も以前紅茶にハマったことがありますし、どちらかといえば、自分も”そっち系”の人間だと思っています。私は、男が男同士でつるんでいるのが、何となくカッコ悪いなぁと思ってしまうのです。この考えもおそらく時代の影響を受けているのでしょう。

 大学生を普段から見ていて、今の子たちはほんとに素直だなと思う反面、ずるい大人たちの都合のいいように騙されてしまうのではないかと心配になることがよくあります。

 無鉄砲で、自尊心が高くて、無謀で、厄介で、やたらうるさいのが若者であり、大人たちにうざったがられ、煙たがられ、呆れられる程度でないと、悪い大人達のいいなりになってしまいそうな気がして私はならないのです。

 就職しようにも、上の世代ががっちりと正社員の椅子を離さないので派遣のポジションにとどまり、正社員になっても自分はもらえるはずもない年金を高齢者のためにせっせと払ってあげて、挙句の果てには、モノが売れないのは「若者の〇〇離れ」のせいだと大人たちにさんざん言われても、反論するわけでも、大規模なストを起こすわけでも、暴動を起こすわけでもなく、ただ静かに目の前の草を噛み続ける若者たち…。

 大人が一番怖いのは、若者が無謀なエネルギーで”歯向かってくる”ことでしょう。

 男同士でつるんで紅茶を飲んでいてもいいのですが、若い男性には「おとなしそうに見えて、実はしっぽに鋭い”とげ”という武器をもっているだぜ!」という草食恐竜のステゴザウルスのようになって欲しいなぁと、とある大学教員はホットワインをちびちび飲みながら思ったわけです。