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夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

料理を分子レベルで調べたい理由 −食の流れの中で−

 前々回*1、前回*2の続き。

 今から約11年前、大学院時代の「生体物理化学」という研究室から、「食品科学」という研究室の教員になりました。

 ちょうど、食の研究分野では、食品そのものを研究するよりも、その機能性、特に「生体調節機能」に関する研究が盛んに行われている時期でした。食品の病気を予防するという働きに、日本が世界に先駆けて注目していた頃です。

 食品研究者も生理学や栄養学の知識や実験技術がないと、文字通り”食っていけない”ような状態でした。その頃から、私は食べる側と食べられる側、すなわち「食品学」と「栄養学」を専門の2本柱にするようになりました。

 そして、今いる研究室の名称は、「食品分子栄養学」です。

 ところで、このブログで何度も書いている下の「食の流れ」ですが、

生産 → 製造・加工 → 保蔵・流通 → 調理 → 摂食 → 消化 → 吸収 → 代謝

この”流れ”で、私たちが最も目にするのは調理されたあとの「料理」でしょう。普段、料理しない人も、食べるのは調理が施された料理です。

 多くの人の最も興味あるのは、食のはじめの「生産」や食の終わりの「代謝」よりも、私たちが最も「食」に接する対象である「料理」であるに違いありません。

 これまでの食品学では、成分組成や機能性成分など、食材そのものを研究のターゲットにしてきた場合が多く、料理を研究対象にする場合は極端に少なかったといえるでしょう。調理学または調理科学という学問がありますが、調理されたものである”料理”を研究ターゲットとしているよりも、調理方法を研究の主体においている場合が多いのではないでしょうか。

 例えば、日本の主食である「米」の研究者は、育種からその栄養性の研究分野にまでたくさんいるでしょうが、「チャーハン」や「雑炊」の研究者はそうそうお見かけしません。

 また、「ラーメン研究家」の方などはたくさんいるでしょうが、ラーメンを科学的に研究している「ラーメン研究者」はラーメンを作っている企業にしか基本いないことでしょう。

 しかし、料理が研究対象として、食材や栄養・機能性と比較して、魅力や価値がないとはとうてい思えません。

 パンという「料理」は、紀元前から今まで何千年も伝え作り続けられています。現在のパンは、長年多くの人の試行錯誤を重ねた知恵の結晶ともいえるものですが、その全貌について科学的に十分に理解されているとは限りません。

 料理の元となる食材を科学する「食品学者」、それを食べたときの体での働きを科学する「栄養学者」、その間の料理を科学する「料理学者」が世の中にいてもおかしくないはずです。

 料理を科学的に解析するには、生物学が「分子生物学」で驚異的に進歩したように、料理を分子レベルで調べることがその進歩には不可欠でしょう。

 すなわち、「分子料理学」の登場です。

 (まだ、つづくのか?)

*1:[http://d.hatena.ne.jp/yashoku/20110119/p2:title=料理を分子レベルで調べたい理由 −料理は化学実験−] - 食品研究者の夜食日記

*2:[http://d.hatena.ne.jp/yashoku/20110120/p2:title=料理を分子レベルで調べたい理由 −アイスクリーム作りでわかったこと−] - 食品研究者の夜食日記