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夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

料理を分子レベルで調べたい理由 −アイスクリーム作りでわかったこと−

 昨日*1の続き。

 学生時代、料理が好きだったのと、貧乏だったので、毎晩家でご飯を作っていました。さらに、お菓子作りが趣味な同級生に触発され、週末、家でケーキやパンなども作るようになりました。

 お菓子を作ってみると、基本レシピ通りにすれば、それなりにおいしくできることがわかりました。たまに、自分で勝手にアレンジして、さほどおいしくないお菓子ができた時も、「いまいちだなぁ」といいながら喜んで食べていました。

 「おいしくするにはどうしたらよいか」ということを考えるのが楽しかったのです。

 特にはまったのは、アイスクリーム作りでした。大学院時代、デロンギの家庭用のアイスクリームメーカー(容器を冷凍庫で事前に冷やしておくタイプ)を奮発して買い、平日実験が終わって日付が変わる頃に家に帰ってから、毎晩のようにアイスクリームを作っていた時期があります。

 アイスクリームのミックスの材料の配合を変えたり、混ぜ合わせる温度を変えてみたり、ミックスを寝かす時間を変えたり。1ヶ月ぐらい、毎晩真夜中に、バニラアイスクリームを市販のホームサイズぐらい作って、その日のうちに全部平らげていました。

 そのアイスクリーム作製にはまっていた時期がちょうど真冬だったので、食べ終わった後、布団の中でブルブル震えながら眠りについた記憶があります。アイスクリームを大量に食べると、”内”からキンキンに冷えるのです。

 おかげで、アイスクリーム作りに関しては、けっこう完ぺきなレシピと腕を持っています。

 今考えると、なぜあんなにアイスクリーム作りに没頭していたのか自分でもよくわかりません。しかし、なめらかな舌触りのアイスクリームを作るためには、加熱の時間や温度がミックスに及ぼす影響、卵黄の乳化性などを”ミクロなレベル”で考えないといけないなと感じたことは覚えています。

 当時、大学では、鶏卵の薄膜である卵殻膜やニワトリの羽毛などを使って、重金属や貴金属イオンを回収する研究をしており、一番回収できる温度やpHなどの条件を検討していました。

 大学でも家でも、どちらでの条件検討の「実験」していたわけです。

 実験には、失敗がつきものです。これまでの経験上、実験のうち95%以上で、何かしらの”失敗”をします。実験では、試行錯誤(trial and error)を重ねなければ、きちんとした結果が見えてこないことがほとんどです。

 この試行錯誤する大切さを、私は大学での実験で学んだのか、家でのアイスクリーム作りで学んだのか、今となってはよくわかりません…。

 (また、つづく)

*1:[http://d.hatena.ne.jp/yashoku/20110119/p2:title=料理を分子レベルで調べたい理由 −料理は化学実験−] - 食品研究者の夜食日記