夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

人はなぜ二日酔いになるのか?

 年末年始、お酒の飲み過ぎで「二日酔い」になった人もきっと多いことでしょう。

 昨年の大晦日に、その二日酔いに関するちょっと面白い論文が出ました。それが、こちら↓。

Acetate Causes Alcohol Hangover Headache in Rats

Maxwell CR, Spangenberg RJ, Hoek JB, Silberstein SD, Oshinsky ML.
Department of Neurology, Thomas Jefferson University, Philadelphia, Pennsylvania, United States of America.
PLoS One. 2010 Dec 31;5(12):e15963

 「酢酸が、アルコールによる二日酔いの頭痛を引き起こす」というラットでの実験です。

 まず背景として、二日酔いのメカニズムがまだわかっていなかったということに驚きです。世の中、わかっていそうなことほど、やはりわかっていません。

 さらに、二日酔いによる頭痛の原因は、アルコール(エタノール)が代謝された”アセトアルデヒド”かと思っていましたが、どうもアセトアルデヒドがさらに代謝された”酢酸”のようだというのが、2番目の驚きです。

 アセトアルデヒドを酢酸にするアルデヒド脱水素酵素(ALDH)の働きが弱い人は、お酒を飲むと顔が赤くなり、気分が悪くなりやすいといわれています。アジア人、特に日本人はALDHの遺伝子変異型が多いことで有名です。

 ですので、アセトアルデヒドが二日酔いの原因かと私は思っていましたが、どうもそうではないようです。”酢酸”が原因のようです。

 確かに、お酒がたくさん飲めることと、次の日二日酔いになることとは、違いますね。

 もう一つ、この論文で面白かったのは、酢酸による二日酔いの頭痛をカフェインが和らげるというものです。おそらく、カフェインは酢酸の頭痛誘発効果をブロックするのでしょう。実際、カフェインは、情報伝達物質であるアデノシンの作用を抑制することでも知られています(アデノシンの作用を阻害すると人は覚醒する)。

 論文の著者は、酢酸濃度が急上昇し始める飲酒後、約4時間にカフェインを取るのが最高の時間といっています。

 お酒を飲んだ4時間後に、コーヒーをがぶがぶ飲めば二日酔いにならないということでしょうか。まぁ、ラットだけの効果かもしれませんが…。今度、自分で試してみたいと思います。