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夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

「甘味のない世界」は、色々な意味で甘くない

食の科学 おいしさ

 クリスマスに欠かせない食べ物といったら、やはり「クリスマスケーキ」です。そのケーキから、もし”甘さ”だけを完全に抜き取ってしまったら、きっとクリスマスは、文字通り”味気ない”ものになってしまうことでしょう。

 今回も1年生対象の少人数教育の演習ネタから。

 健康茶として知られている「ギムネマ茶」。このお茶を飲むと、甘味を感じにくくなることでつとに有名です。ものすごい濃いギムネマ茶を飲んで「甘味のない世界(Sweetless World)」を体験してみようというのが今回の演習の趣旨です。

 ドラッグストアで普通に売られているパック入りのギムネマ茶を、6袋ほど急須に入れて、お湯を注いだのがこちら↓。

 見た目でわかるようにかなり濃いです。お茶を口に入れると、顔がゆがみます。学生いわく、味は「落花生の渋皮をお茶にしたようなもの」だそうです。いい例えです。

 これを数口飲んだ後、まずグラニュー糖をなめた時の学生たちのリアルな驚きの表情が、教員としては実に楽しいひとときです。

「全然、甘くない…。」
「す、砂だ…。」

 ギムネマ茶を飲むと、食べ物から見事に「甘味だけ引き算された味」になります。チョコレートは、ねっとりした脂分だけ感じる粘土となり、ケーキの生クリームはひげ剃り用のシェービングフォームになり、ハイチュウはプラスチックのかたまりになります。

 学生に 「どう、甘味のない世界は?」と聞いたら、
 「絶望です…。」という答えが返ってきました。

 確かに、甘味のない世界は、”絶望”という言葉がぴったりの世界です。

 食品中の甘さの存在は偉大です。食事から甘味を抜き取られてしまったら、私は1日も経たずに発狂してしまうことでしょう。

 健康もそうですが、本当に大切なものは、失わないとその真の重要性がわからないものです。誰でも一度くらいは、「甘味にない世界」を経験したほうがいいかもしれません。

 ただ、クリスマスにギムネマ茶を飲むのはよした方がいいでしょうね。「灰色のクリスマス」になってしまいますから…。