夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

アップルパイのシナモンの是非

 仙台の「パイ&シュー すがわら」さんのアップルパイは最高!という記事*1を前に書きましたが、北米に留学していた時、あちらのアップルパイに入っているシナモンの香りの強烈さには辟易としたものです。

 私は、シナモンの香りが嫌いというわけではありません。京都の代表的なおみやげの「八つ橋」の香りは、ニッキ、桂皮(ケイヒ)で、シナモンの別称ですが、あの程度の香りは上品で好きです。しかし、アップルパイなどに入れすぎると、シナモンの存在感の強さでリンゴの爽やかな香りが吹き飛んでしまうのが非常に残念なのです。

 「アップルパイは、”アップル”パイであって、”シナモン”パイではないのだよ」と留学中ずっと思っていました。

 北米において、アップルパイに限らず、シナモンの香りをふんだんに効かせたお菓子への遭遇率は、かなり高かったです。特にリンゴが絡んだお菓子には、ほぼ100%シナモンの香りもセットになっていました。また、コーヒー店のカプチーノなどにも容赦なくシナモンシュガーが降りかかっていた記憶があります。

 そしてわかったことは、シナモンの香りが苦手な方が結構な割合でいるということです。

 同じ時期に留学していた日本人の方から、最初のラボの歓迎会で、シナモンたっぷりの”シナボン”が出されたのを、”内心涙目で”食べきった話を切々と聞かされました。日本人に限らず、「THE 'I HATE CINNAMON' CLUB!」というFacebook*2や、Cinnamon Hate - 69% People Agree*3のようなサイトがあるぐらいですから、シナモンが苦手な人はたくさんいるのでしょう。

 食べ物の好き嫌いは、その”味”というよりも、”香り”や”臭い”がダメという方が多いです。香りを感じる脳の部分である「大脳辺縁系」が、記憶、情動、本能などの基本的な感情を司る箇所であるため、苦手な香りを「生理的にイヤ」と感じてしまうのがその要因なのかもしれません。

 私も、シイタケの味は好きですが、あの香りが何ともダメです。そのシイタケの香りの成分はレンチオニンという化合物で、その構造式がシイタケに似ていると以前書きましたが*4、シナモンの香りである「シンナムアルデヒド (cinnamaldehyde)」 も「アップルパイを食べるさま」にまぁ見えなくもないので、アップルパイにシナモンを入れるのは”化学構造式上”やむを得ないのでしょうか。

 ↓シンナムアルデヒドの構造式

*1:[http://d.hatena.ne.jp/yashoku/20101129/p2:title=「アップルパイ」ホール] - 食品研究者の夜食日記

*2:[http://ja-jp.facebook.com/group.php?gid=2225631720:title=THE 'I HATE CINNAMON' CLUB!] | Facebook

*3:[http://amplicate.com/hate/cinnamon:title=Cinnamon Hate - 69% People Agree (5,731 opinions)]

*4:[http://d.hatena.ne.jp/yashoku/20100623/p1:title=私の嫌いな食べ物] - 食品研究者の夜食日記