夜食日記

分子調理学者。料理・調理のメカニズムを研究する大学教授。著書に『料理と科学のおいしい出会い』(化学同人)、共訳書に『The Kitchen as Laboratory』(講談社)など。分子料理・分子調理ラボ(http://molecular-cooking-lab.net)を主宰。関心は「食×科学×芸術」。

カニの味を合成したら、確かにカニだった

 食べる人を夢中にさせるカニ。そのカニの味を、人が簡単に合成できると知ったら誰しも驚くのではないでしょうか。

 今日の大学1年生対象の少人数教育「食産業基礎演習」でのお話です。この演習科目は、基本的には各教員が何を教えても構わないというフリーな科目で、私は食べ物の「おいしさ」に関連したディスカッションや簡単な実験をしています。

 今日のテーマは、今が旬の「カニ」について。

 カニの味を再現することができる成分表(カニ味再現表)というのが、明らかになっています。具体的には、下の表のとおりです。

必須成分 組成(mg/100 ml)
グリシン 600
アラニン 200
アルギニン 600
グルタミン酸ナトリウム 30
イノシン酸ナトリウム 20
食塩 500
第二リン酸カリウム 400

 4つのアミノ酸と1つの核酸、そして2つの塩類、たったこれだけです。これを混ぜあわせただけで、はたしてカニの味になるのか?実際に、学生達にこの成分表どおりに調合してもらいました。

 そして、味見してみたところ、
 「カニだ!」
 「ほんとだ、カニだ!」
 「生臭いカニ〜!」
と、ひたすらカニ、カニの連呼。

 実は私も今回、初めてこのカニ味の合成と試食をしてみましたが、”確かにカニ”です。”笑っちゃうぐらいカニ”です。溶液からの香りは全くしませんが、飲んだ時の鼻から抜ける香りが”まさにカニ”です。

 たった数種類のアミノ酸と核酸などでカニの味が作れることに、ちょっと学生たちも驚いたようです。私も正直驚きました。

 カニ味再現表は、私が尊敬している京都大学大学院教授の伏木亨先生の「おいしさの科学」からの引用です。
グルメの話 おいしさの科学 (サイエンティフィックアドベンチャー)