夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

分子料理教室、スタート!

 今年はじめ、新年の夢としてブログにも書きましたが、料理を分子レベルでとらえる「分子料理教室」を実際に開催しました。

 というのは、今年度から新しく赴任した大学では、1年生の初年次教育として「基礎ゼミ」という必修科目があります。これは学部の各教員に学科の枠を超えた5名ほどの学生がランダムに配属し、週1回その教員のもとで少人数の教育を受けるというものです。

 基本的に何を題材にしても構わないという自由なゼミなので、分子料理を遊び的要素を入れながらやってみようと思いました。教育的には、身近な料理を科学的に見ることで、多面的なもののとらえ方を学んでほしいという狙いがあります。受験で暗記型に染まった脳を少しでも柔らかくし、考えることが面白いと感じてくれれば御の字です。

 火曜日の夕方からがこの基礎ゼミの時間で、先々週、第1回目の分子料理教室を行ないました。私の部屋に来たのは、男性4名、女性1名の計5名。最初は簡単な自己紹介をしてもらいました。出身は、千葉、大阪、静岡、宮城、岩手とばらばらで、一人暮らしが多く、料理は各自それなりにはしているとのこと。

 まず私が以前このブログでも紹介した「エルヴィ・ティス教授の分子料理法」という記事のコピーを渡し、分子料理がどんなものか説明した後、まずジャブとしてあることをみんなで考えようと提案しました。

 「普段私たちが食べている料理を、エルヴィ・ティスの分子料理式で表してみよう。」

 一同、固まる学生たち。

 「ティスさんは、このふたつの要素を組み合わせることで、あらゆる料理が表現できるといっています。」

要素その1(食材の状態)

  • G(ガス):気体
  • W(ウォーター):液体
  • O(オイル):油脂
  • S(ソリッド):固体

要素その2(分子活動の状態)

  • /:分散
  • +:併存
  • ⊃:包合、結合
  • σ:重層

 ピンと来ず、ノーリアクションの学生たち。

 「たとえば鍋料理だったら、固体の具材(S1, S2, S3…)が水の中に分散状態あるから、『(S1+S2+S3…)/W』って式になるよね。料理で使われている食材の形と状態を2つの要素で捉えると、なんとなく式を立てられるような気がしないかい。」

 ある学生がポツリとひとこと。

 「間違ってもいいんですか?」

 「もともと正解なんてないんだから、間違っても全く構わないよ。自分の頭で考えることが最大の目的なんだから。」

 戸惑いながらも、なんとなく課題の趣旨を分かった学生たち。とりあえず来週までに3品の料理の式を各自考えてくるようにといいその日のゼミは終了となりました。

 先週、実際に各自が考えてきた分子料理式を発表してもらいましたが、なかなか食べごたえ(見ごたえ)のある式を披露してくれました。それについては、また次回にでも。

 第2回目のゼミでは、「実験」付きです。