夜食日記

食品研究者が夜中に「食」についてつらつら綴る日記。専門は、分子レベルの「食品学」「調理学」「栄養学」。「クックパッド食みらい研究所」特別研究員。分子料理・分子調理ラボ(www.molecular-cooking-lab.net)を主宰しています。食ほど体と心に影響を及ぼすものはないと思いませんか。

巨大イカの超節約生活

 以前、節約も限界? 「1食30円」以下に抑えるには、という記事を書きましたが、自然の生き物には驚くべき節約の達人がいます。現存する動物でおそらく、最も節約生活を送っているのが世界最大の無脊椎動物である巨大イカ「ダイオウホウズキイカ」でしょう。

 WIRED VISIONから*1。元ネタはナショナルジオグラフィック*2

ダイオウホウズキイカ(WIRED VISIONより)

一般の人たちは、巨大イカは獰猛で高速、クジラや潜水艦まで相手にできると思っているかもしれない。
しかし、ロードアイランド大学のBrad Seibel氏と、リスボン大学のRui Rosa氏が4月20日付けで発表した論文によると、「深海に潜む危険な怪物」という巨大イカのイメージは神話にすぎないらしい。
ダイオウホオズキイカは、代謝がかなり遅く、体重500キログラムのイカでも、1日あたり50グラム程度の魚を食べれば良いらしい[体重500kgのダイオウホウズキイカは、5kgの魚一匹で200日間の生命活動をまかなえると計算されている]。

そして、「これらのイカは自分では動かずに留まって、やってきた獲物を捕まえて食べる」のだという。
小さなイカは素早く動くが、体が大きくなり生息域が深海になるにつれて、動きが遅くなる(巨大イカは深さ2000メートルほどの海中にいる)。
[以下の図は、小さなイカ→ジャンボ・スクイッド(フンボルトイカ)→ダイオウイカ→ダイオウホウズキイカの体重と、酸素消費量の相関関係]

恒温動物のクジラは、体温を維持するために大量に食べないといけないが、変温動物のイカは、ときどきやってくる獲物をほんの少量食べていれば良いのだ。[クジラと比べると、必要エネルギー量は300分の1から600分の1と推定されている]

 「体重500kgのダイオウホウズキイカは、5kgの魚一匹で200日間の生命活動をまかなえる」というのは、ちょっと凄過ぎる燃費の良さでしょう。体重50kgの人間が、0.5kgの魚(アジ4、5匹)だけで半年以上生きながらえるようなものです…。”大王”なのにあまりにも少食です。

 大きい動物ほど、外敵から襲われにくく、さらに代謝効率が低いのが一般的です。ダイオウホウズキイカのように体を大きくして捕食者から身を守り、低温の深海でひっそりとエサの魚が自分の前を通り過ぎるのを待つという「ライフスタイル」は、生き物の生存戦略として十分”アリ”でしょう。

 究極の節約生活を見せてもらった気分です。

*1:巨大イカは少食でロハス | [http://wiredvision.jp/news/201006/2010062521.html:title=WIRED VISION]

*2:ニュース - 動物 - ダイオウホウズキイカの低消費生活(記事全文) - [http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=20100513003&expand:title=ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト]